プレママ日記

美しい言葉(38週6日)

「みーちゃんたーちゃんが生まれたら、いっぱい童謡を歌ってあげたい」
なんて書いたものの(コワイ童謡(38週5日)を見てください)、一つ問題が。
 実はかあさま、音痴なんです……。

 音がとれない。
 それなら、音がなければいい
 そこで、詞(詩)に注目です。

 この日、詩の朗読CDを購入しました。
 まず、「愛誦したい日本の名詩」(KING RECORDS)。

 高村光太郎の「道程」、いいですねえ。
「僕の後ろに道は出来る」
 小田急ロマンスカーの一番後ろの展望席に座って、まっすぐに伸びる線路を見ていると、つい口ずさみたくなります。

 もちろん、「雨ニモマケズ」入ってます。
 「汚れっちまった悲しみに」もありますよ。

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

 ご存じ、三好達治「雪」です。
 みーちゃんたーちゃんには、こういう、想像力をかきたてる、美しい日本語に触れてほしいなあ。

 でもね、やっぱり詩は赤ちゃん向きではないですね。
 「君死にたまふことなかれ」とか。
 「水ヲ下サイ」とか。
 まだ知らせたくない現実が、詩には詰まっています。

 谷川俊太郎の「二十億光年の孤独」
 生まれてさえいない胎児に、孤独を感じてほしくないです。

 大人が聴いていても、さっと流せない、ドロンとしたものが耳に残ります。
 詩人が、魂を削るようにして書いているのですから、当然ですね。

 でも、どうしましょう。
 かあさまとしては、美しい言葉をみーちゃんたーちゃんに聴かせたいのです。
 美しいと言えば、あれでしょう。

秋の日の
ヰ゛オロンの
ためいきの……

 そう、ヴェルレーヌの「落葉」(上田敏・訳詩)です。
 というわけで、もちろん、「名訳で味わう世界の名詩」(KING RECORDS)も購入しましたよ。

 ただ、美しいには美しいのですが、美し過ぎると言いますか、耽美と言いますか……。
 「波は酔いたり」とか。
 「高き月下に棹ささん」とか。
 「綾子羽ぶたへ今様に」とか。
 「東邦の綺羅荘厳」とか。

 こちらも赤ちゃん向きではありませんでした。
 そうじゃないかと思って買っておいたのが、「心にしみいる名俳句200選」(KING RECORDS)。

古池や蛙飛び込む水の音(松尾芭蕉)

 やっぱり日本人はこれでしょう――と思ったのですが、5・7・5の17音が200個、淡々と朗読されるわけです。
「古池……」
と来た瞬間に、ああ、あれね、と解釈から、何から何まで思い浮かぶくらいじゃないと、正直、つらいです。
 教養あるプレママにお勧めします。
 かあさまは脱落です……。

 同様に、教養あるプレママにお勧めしたいのが、「吟じたい漢詩80選」(KING RECORDS)。

国破れて 山河在り
城春にして 草木深し

 杜甫の「春望」の一部ですけどね、いいですねえ。
 こういうのを口ずさんでいると、人間が大きくなるような気がします。

 もっと早くCDを買って、注釈書片手に繰り返し聴いておくべきでした。

「へえ、『春眠 暁を覚えず』の次は『処処 啼鳥を聞く』なんだあ」
なんて言って感心しているようじゃあ、ダメですな。

 「小倉百人一首」(KING RECORDS)は何回も聴きました。

 本物の読手の方が読唱しているので、
「全部おぼえているわ、当たり前でしょ!」
というプレママさんは競技かるた感覚で、かあさまのように、
「いくつか、なんとなくおぼえているような……」
というプレママさんは、『原色小倉百人一首』(文英堂)のようなアンチョコを見ながら聴くといいと思います。

 かあさまは、産後も授乳しながら聴いてました。
 事情があって、授乳時間が異常に長かったんですよねえ(その話はいずれまた)。

 そうだ、最近、みーちゃんたーちゃん(2歳6か月)、「さくらさくら」を好んで歌うのです。
 歌詞をちゃんとおぼえてます。
「いざやー、いざやー、みーにーゆーかーんー」
とか、けっこう難しいと思うんですけど。
 そろそろ一緒に「小倉百人一首」を聴こうかなあ……。

追記【2014.2.1】
百人一首についてのエントリを書きました。
一緒に聴いているかどうか、の答えもわかるはずですよ!
百人一首のすすめ
「一緒に遊ぼう」百人一首イベント開催しました。10のヒント付き。

コワイ童謡(38週5日)

 「鮫島有美子の四季」歌うぞ(36週6日)を見てください)は、やはり大人向き。
 素直に子ども向きのものを買うべきだと、気がつきました。
 そう、童謡です。

 CDショップで見比べて「決定版 よいこの童謡」というのを買いました。
 決め手は……パッケージのイラストがかわいかったことかな。

 童謡のCDはいっぱいありますので、どれがいいかな、と考えはじめると、いつまでたっても決められません。
 まずはフィーリングで決めていいんじゃないかな。
 だいたいどれでも同じだと思いますし。

 厳密に言うと、違うんですけどね。
〈こっちのCDのこっちの歌い手さんより、あっちのCDのあっちの歌い手さんのほうが、歌の雰囲気がよくわかるな〉
 何度も何度も、繰り返し聴くうちに、そんなことに気がつくようになりますが、それはだいぶ先の話です。

 さて、童謡を聴くなんて、自分の子ども時代以来。
 みーちゃんたーちゃんが生まれたら、いっぱい童謡を聴かせてあげたり、歌ってあげたりするつもりでしたが、いざ知っている童謡を思い浮かべると……意外と出てきません。
 やっと思いついても、歌詞が、なかなか思い出せません。
 これは、事前におさらいしておいたほうがいいと思います。
 少なくともかあさまは、生まれる前に練習しておいて、良かったと思いました。
 もっと早く買って、聴きこんでおくべきだったとも思いました。
 胎教にもいいと思いますよ。

 ただね、深く考え過ぎる人の胎教には、かえってマイナスかもしれません。
 ご注意ください!
 というのも、歌詞が意外と現実的だったり、逆にシュールだったりなのです。

 「さっちゃん」の3番、ご存じですか?
 さっちゃんが遠くへ行くみたいだけど、
「ちっちゃいから ぼくのこと わすれて しまうだろ」
ですって。
 「ぼく」も子どもだろうと思いますが、そんな小さいうちから、ひとから忘れ去られることの哀しみを知っているのです。

 「ちいさい秋みつけた」は、必ずしも子ども向きの歌というわけではないと思いますが、
「おへやはきたむき」とか、
「うつろなめのいろ」とか、
ものすご~く暗い。
「神田川か!」
と突っ込みたくなりました。

 「いぬのおまわりさん」では、まいごのこねこちゃんは迷子のまま。
 今も、
「ニャン ニャン ニャンニャーン」
と鳴いているのでしょうか。
 せつないです。

 極めつけは「やぎさんゆうびん」
 しろやぎから来た手紙を、くろやぎは読まずに食べて、
「さっきの てがみの ごようじ なあに」
と手紙を書いて、その手紙を、しろやぎは読まずに食べて、また手紙を書いて……。

 しろやぎとくろやぎは、手紙を書けども、書けども、永遠に意思疎通できないのです。
 なんとシュールな歌詞なのでしょう。

 子どもの世界って、けっこうコワイですねえ。
 もうすぐそこへ踏み込むのかと思うと、ドキドキするのでした。

プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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