2009年10月

退院(35週3日)

     この日、退院しました。

退院したい(35週2日)

 イレギュラーなお産のため、睡眠不足のかあさま。
 初日から早寝早起きに失敗し、がっかりです。

 助産師さんが、
「せっかく入院したのに、眠れなかったでしょう」
とか、
「いきなり、リアルなお産の一部始終を聞かされてもねぇ……。予行演習になればいいんだけど……」
などと、気の毒がってくれました。
 そのくらい、珍しい出来事だったのでしょう。

 そうです。
 臨月に入ってから、他人のお産の様子をリアルに見聞きする(正確には聞くだけでしたが)ことができる人は、めったにいないはず。
 あとから考えれば、かあさまはものすごく貴重な体験をしたわけです。
 かあさま自身のお産が経産婦並みの安産だったのも、もしかしたら、この“お手本”があったからかもしれません。
 でも、そのときは、正直に言って、
〈冗談じゃない!〉
という気分でした。
 いくら素晴らしいお手本を見せてもらっても、かあさまは、そもそも助産院でお産ができるかどうかも危ぶまれる状況にあるのです。
 だから、むくみを解消して、自分の身体を助産院でお産ができる状態に持っていくのに、必死なんです。
 お産がはじまってからのことなんて、とても考える余裕はないんです(そんなだったから、いざお産がはじまったら困っちゃったんですけどね)。

 家に帰ろう。
 そう思いました。
 別に、思い通りに事が運ばなかったから、すねているわけじゃないんですよ。
〈環境を変えれば、自分を変えられる〉
という考え方が安易だったな、と思ったわけです。
 もちろん、環境を変えて成功する場合もあるんですけど、かあさまの場合、自分の気持ちとか状態のほうを変えなければならないんじゃないか、と気付いたのです。
 他力本願がいけなかった、と言うこともできるかもしれません。

 ところが、
「退院したいんですけど」
 院長先生に言いましたが、そう簡単に認めてくれません。
 当然ですよね。

 部屋に1人でいても、グルグル考え事をしてしまって、精神衛生上悪いです。
 身体を動かせば気分も晴れるのでしょうが、むくみのひどいかあさまは、院長先生から、無理に身体を動かさないほうがよい、と言われていましたし、自分でも、あまり動きたくありませんでした。

 で、念のため持って来たノートにあれこれ書き綴っていたら、運悪く院長先生に見つかり、ノートを取り上げられてしまいました。
 院長先生は、
「字を読まない。何も考えちゃだめよ~。野生に戻るのよ~」
と言います。
 でも、字を読まないこと、書かないこと、何も考えないことは不可能です。
 少なくとも、かあさまにはとても難しいことなのだと、このときよくわかりました。

 何もせず、悶々としているうちに湧き上がってきた言葉は、
「ちゃんと産んでやる~」
でした。

プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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