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主婦は東大卒女性の天職

主婦が欲しいのは、「メイド」じゃなくて「執事」(または「秘書」)という先週見かけたエントリに、強く同意しつつも違和感をもったので、取り上げます。

同意するのは、こういう部分。

「主婦の最大のタスクは、家事でも育児でもなく、実は家庭経営であり…ヒト・モノ・カネのリソース配分を決めるということで、人事(作業の配分、後進=子供の育成など)総務(ロジスティクス、スケジューリング、医療・介護・義家族・近所付き合い・冠婚葬祭など)財務(予算配分、資産管理など)といったところが、料理洗濯掃除の肉体労働の部分よりも、実は重要だしストレスフルなのだ」
「育児ではオムツ替えなんて2-3年で終わるが、子供の学校選択やお稽古事や宿題対策や友達とのトラブル対策などの総合戦略のほうが大変」

ほんとに、そうですよね。
赤ちゃん時代は、程度の差はあるものの、熱を出したりブツブツができたり、何かと病気続きで、そのたびに、症状を把握し、前例と比較しつつネットその他で情報収集し、どの病院にどのタイミングで連れていくか判断し、兼業主婦の場合は仕事との折り合いをどこでつけるかも同時にジャッジする、といった部分が、実際の看病と同じくらい、あるいはそれ以上にストレスフルだったりするわけです。
病気が減ったと思ったら、どの幼稚園・保育園・小学校に行かせるか、行けるかという、お受験やら保育園探しやらの大問題がやって来て、子どもの希望や適性や時流を見ながらお稽古事をチョイスし、発表会のようなアウトプットや子どもの様子を観察しつつ、ご近所の口コミ情報を集めつつ、場合によってはお教室を変えたりといった決断を下す。
並行して、宿題を含め勉強の進捗状況を把握し、ドリルその他を適宜投入、塾選びのタスクも発生するかもしれません。
さらには、友だちをいじめていないか、いじめられていないか、兆候を求めて、微妙な表情や小さな身体の傷にも注意を払う。
まったく神経を遣う事柄ばかりです。

それから、同じブログ内の過去エントリ父の日雑感 - マネージメントとしてのお父さん、お母さんの、

「最近のお父さん方、特に若いお父さんたちは、昔と比べてずいぶん家事や育児に関わるようになった。しかし、友人の男性が「オレは子供のオムツをいつも換えていた」と言って自慢するのを聞くにつけ、「でもそれって、工場でボルトを一個まわしてつけるのと同じようなもんだよな・・・」と内心思う」

こちらの表現も素晴らしい!
たしかに、たしかに。
そういうところって、ある、ある。

要するに、同じエントリの、

「今の母親の仕事のうち、一番ストレスが多いのは、単純労働者としての「家事・育児の労働そのもの」よりも、経営者としての「家庭経営における日々の判断」の難しさだと思っている」

「夕食を作る作業そのものより、家族の好みや体質、栄養のバランス、冷蔵庫の中の在庫状況、サイフの中味、昨日家族がそれぞれ何を食べたか、などといったあらゆる要素を総合的に判断して夕食の献立を考えるほうが、よほど大変だし、ストレスが多い。失敗すると、「えー、これ今日の給食でも食べたよー」などとすぐに文句が出てしまう」

といった辺りについては、100%同意なのです。

それどころか私、以前から、オムツ替えや送り迎えといった単純労働がせいぜいで、家庭経営なんてとてもじゃないが任せられないレベルの夫に対して、
「このヒトは、実は無能なのだろうか…」
「そんなだから、会社でも人がついてこないんだろうな~」
「まあ、子どもを育てられないヒトに、部下は育てられないよね~」
などと、冷ややかな眼差しを向けていたもので(ホントに無能かどうかはさておき)、上で引用したエントリを読んで、
「なんだ、そういうヒトって、うちのとうさまだけじゃなかったんだ~」
と知り、心の底から安心しました(安心していていいのかは、一つの問題ですけどね)。

じゃあ、どこに違和感をおぼえるかというと、女性(お母さん)の「マネージメントのストレス」を軽減するべきだ、という全体の論調。

え~そこが面白いんじゃん。
なんで、軽減されなきゃいけないの?

家庭という、小さいながらも多種多様な側面を持つ世界を、さまざまなバランスに配慮しながら、絶妙なさじ加減で差配していく面白さ。
その楽しみを、オトコ(お父さん)や機械に取られてなるものか。
そんな難しい仕事、オトコ(お父さん)や機械にできるはずもなく。
そんな面白いシゴトを実はしていると、オトコ(お父さん)に知られるのさえ、口惜しい。

学部は違うけど、東大の2年先輩の女性が、在学中、
「私の夢は、立派な専業主婦になることだ」
と言っていました。
私は、東大に縁遠い高校から、ある種の覚悟をもって東大に入ったので、当時は、
「じゃあ、なんで東大に来たんだろ? 主婦に学歴は必須じゃないでしょ。だったら、東大卒という学歴が喉から手が出るほどほしいと思っている人に、その場所を譲ってあげればいいのに」
と思いました。
今なら、彼女の言いたかったこともわかります。
主婦というのは、さまざまな利益衡量と総合判断が必要なゼネラルマネジャー職
しかも、コミュニケーションやら教育やらといった観点から、高い教養があれば、それがそのまま生かせる稀有な世界。
そう考えてみると、主婦はまさに、東大卒(実際の「東大卒」ではなくて、国をマネージメントする官僚の養成学校としてスタートした、理念としての東大の卒業生)にふさわしい仕事なんですね。

その先輩が今、どこで何をしておられるかは知りません。
でも、東大法学部の同級生の女性で専業主婦をしている人はいます。
小学校のPTAの会長をきっちり務めて、子どもを有名私立中学に入れ(勉強はもちろん自ら指導)、かわいいお弁当も作っています。
だんなの世話もパーフェクト。
家の中は、いつもきちんと片付いている。
ご近所の評判もよろしい。
資産形成もバッチリだろうな、あの調子だと……。
彼女を見ていると、主婦は東大卒女性の天職のように思えてくるんですよね。

……それが私の本音です。
つまり、引用したようなエントリを、男性読者の多い(たぶん)ブログで書くのは、勘弁してくださいよ~ということ。
主婦業という仕事の豊かさ、面白さを、男性陣の目に触れないようにしておきたいわけですな。
ハハハ。
了見が狭いね。

ただ、映画「サマーウォーズ」に描かれていたような、ザ・ニッポンの旧家にありがちな、
「男は座敷で酒盛り。女は土間で立ち働き、でも実は、女が(おばあちゃんが)仕切っているんだよね」
というシステムマネージメント・スタイルは好きではありません。
どちらかと言うと、仕出し屋さんに立派なお弁当を持って来てもらって、自分も酒盛りしたいタイプです。

なもんで、マネージメントに専念できるように、(マネージメントではなく)単純労働を外部化したい、と常々考えています。
うちの場合、卒乳後、外食を意図的に増やしているんですけど、それは、食事を作る手間、食器を洗う手間を省くため。
(ついでに言うと、外食は極力地元の商店街で。地元の口コミ情報を仕入れるためです。)
1年365日分の献立をアップしているのも、いざとなったら家政婦さんに、
「食事は、このサイトを参考に作ってください」
と言えるようにするためでもあるし。
どんなに晴れていても、タオルやユニクロ物を乾燥機にかけるのは、干して取り込んで、の手間を省くためです。
夫には、電気代がもったいないとか、さんざん文句を言われてますけど。

うるさい!
おまえさんには、
「うちの優秀な主婦の時間がもったいない」
という発想はないのか!
ないんだろうな~ありゃ。
トホホ。

【追記】2016.4.4
姉妹編のようなエントリを書きました。
SNSを利用する意味(私の育児方針)

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Comment

  1. cat says:

    良い選手でチームを作れば、監督が口出さなくてもある程度勝てるチームになる。
    アウトソーシングを進めれば、時間・労力・投資等のソースが増えるということなのだから
    マネジャーの資質に関係なく、家庭経営は楽になるのは当然。

    この文章には「ある程度の資金力がある夫婦の主婦がいかに手を抜くか」
    ということは書かれているけど、
    「優れた女性がいかに優れた主婦たるか」という点に関して
    説明が不足していると思う。
    手を抜きたいのに女性も男性も関係ない。
    素直に「家庭経営をアウトソーシングする良い言い訳」って趣旨で書けばいいのに。

    まあ「手抜き」呼ばわり承知のうえで、警戒もされてると思うけど。

  2. 渡辺リエラ says:

    catさん、コメントありがとうございます。なぜか静かなサイトなので、コメントいただけるのはとても嬉しいです。

    >良い選手でチームを作れば、監督が口出さなくてもある程度勝てるチームになる。

    たしかに。

    >アウトソーシングを進めれば、時間・労力・投資等のソースが増えるということなのだから

    そう言えそうですね。

    >マネジャーの資質に関係なく、家庭経営は楽になるのは当然。

    ここはどうでしょうか。
    良い選手は、監督から何も言われなくても自分の仕事が何か、理解しています。
    でも、アウトソース先は、家庭経営者が的確で具体的な指示をしないと、やるべき仕事が定まらないことも多いのでは? 服をクリーニングに出すときも、「汗かいてるから、水洗いで」「ここ食べこぼし。ソースです。シミ抜きを」とか指示しますよね。
    マネージャーの指示が悪いと、家庭の中が薄汚れた服だらけのカオスになる危険さえあります。

    >この文章には「ある程度の資金力がある夫婦の主婦がいかに手を抜くか」 ということは書かれているけど、

    「家庭という、小さいながらも多種多様な側面を持つ世界を、さまざまなバランスに配慮しながら、絶妙なさじ加減で差配していく」マネージメントの面白さを書いたつもりなんだけど、手抜きと理解されたのは残念です。

    >「優れた女性がいかに優れた主婦たるか」という点に関して説明が不足していると思う。

    そうですか、いい説明を思いついたら追記してみますね。

    >素直に「家庭経営をアウトソーシングする良い言い訳」って趣旨で書けばいいのに。

    あれ? 私は家庭経営(マネージメント)をアウトソースするつもりないんですが。でも、引用元エントリはそういう趣旨かもしれませんね。
    私は、楽しいけど難しいマネージメントに時間や労力を割くために、単純労働をアウトソースしたり機械化したりしてます。

  3. 渡辺リエラ says:

    はてなブックマークのhisawoooさんのコメントをうけて、「システム」→「マネージメント・スタイル」に修正しました。ありがとうございました。

  4. ぽんた says:

     そんなに母親が教育ママゴンをやると、過保護になるので、ある意味、逆効果。
     ちなみに私は、親の指示をまったく受けず、塾なし、進学も自己決定でしたが、公立の小中と、国立大付属高校と、東大でした。
     親が指示すれば指示するほど、自己決定おの機会を奪われるので、将来的に、「指示待ち」の無能人間ができます。
     親は何も決めないで、ヒントと金銭援助(学費)を与えるだけで十分でしょう。

    > 主婦業という仕事の豊かさ、面白さを、男性陣の目に触れないようにしておきたいわけですな。

     夫からその機会を奪うのは構いませんが、子供の自己決定の機会を奪っていることに注意するべきです。子供が可哀想。母親のオモチャにされているせいで、自己決定の機会を奪われてしまう。

  5. 渡辺リエラ says:

    ぽんたさん

    コメントありがとうございます。
    「教育ママゴン」ですか?
    このエントリでは主に夫婦の関係に言及しており、親子の関係には触れていないつもりだったので、意外なコメントでした。
    ひょっとして、友人についての「子どもを有名私立中学に入れ(勉強はもちろん自ら指導)」の部分に対するコメントですかね?
    だとすると、たしかにまあ、教育ママゴンという表現が妥当しそうですねw
    私も自分の子どもには、ぽんたさんのように「自己決定」で行ってほしいと願っています。実際、まだ5歳ですが、自分でなんでも考えて決める(ちょっと手強い)人になりつつありますw
    私の親としての理想はツアコンです。こんなの、どう、面白いかもよ、と紹介する人。採否は子ども自身が決めます。
    ぽんたさんのお話、もっと聞きたいです。またコメントくださいね。よろしくお願いします!

  6. 渡辺リエラ says:

    引用部分がわかりにくいなど、気になる部分をちょこちょこと直しました。
    趣旨は変わっていません。

  7. のんちゃん says:

    家庭経営こそ重要かつ面白味のあるタスクという趣旨に激しく同意します。主婦になるまで気がつきませんでしたが、主婦って社長なんですね。なかなかうまく経営できている気がしませんが…。リエラさんの記事を読んで勉強させていただきたいと思いました。

  8. 渡辺リエラ says:

    のんちゃんさん
    コメントありがとうございます。
    「主婦って社長」、まさにその通りですね!
    正解がないところ、ゴールがないところなど、共通点が多いと感じます。
    たぶん「なかなかうまく経営できている気がし」ないところも……。
    私もまだまだ修行中ですので、一緒に勉強していきましょう。
    よろしくお願いします!

  9. ははは says:

    楽をして良い思いをしてる自分を正当化するために
    ぐちゃぐちゃと長文書いてご苦労様です。

    後ろめたいから必死なんでしょ

    子供がゴミになってから気づくのでしょうね

    それも、「旦那のせい!」

    ってするかな?

    それが日本女性の特質だからね

  10. ははは says:

    これを読んで一般男性が思うのは

    高学歴で頭がいいと勘違いしてる婆と結婚したら不幸になるんだな

    ということ

    それと、旦那さんが悲惨だなw

    ということです。

    とても勉強になりました

    ありがとうございます。
     

    これからも勘違いを全世界に発信して
    東大女子の価値を下げていってくださいw
     

  11. 渡辺リエラ says:

    はははさん
    2つもコメントありがとうございます。
    静かなサイトなので、反応があるのはとても嬉しいです。

    > 楽をして良い思いをしてる自分

    あれ?
    自分ではむしろ「なんでこんな茨の道を選んでしまったんだろう」と苦しんでいるんですが……まあ、そうは見てもらえないんだろうな……

    > ぐちゃぐちゃと

    は自分でもそう思います、勢いで書いたエントリなので…でもそんなふうにmessであるところがこのエントリの良さとも思えるんですよね。
     

  12. 渡辺リエラ says:

    はははさん

    続きです。

    > それと、旦那さんが悲惨だなw

    そういうふうに思う方もいる、ということですね。
    それは理解したうえで、ひとこと申し上げたいのですが、「宿六」「馬鹿亭主」といった表現が示すように、我が国では(我が国に限らないのかもしれないけれど)妻が夫を悪く言う伝統があるのではないかと思うのです。その伝統があるという前提で夫をけなしている、言い換えれば、若干の脚色がある、ということです(ホントに若干ですけど)。
    なお、有料メルマガでは夫を持ち上げるエントリを書いておりますので、よろしければそちらもどうぞ。

    思えば、このサイトの始まりは「頭の中がおぼっちゃまのままな夫が、妻の妊娠中に仕事を辞めた」ことによって妻や胎児が感じるストレスを最小限にとどめるための愚痴、でした。
    それが7年後にこのような前向きで肉厚なサイトになっている不思議。
    これもひとえに、訪問という形で応援してくださるみなさまのおかげです。
    この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
生後106日以降のママ日記は有料とさせていただいております。有料とする理由含め詳細は「当サイトについて」をご覧ください。
取材(「取材してほしい」「取材したい」の両方)、お子さまの教育についての相談(実費申し受けます)などもお気軽にどうぞ。「お問い合わせ」からご連絡をお願いします。

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