【お願い】
これは東京都内に住んでいる3歳児の母親である管理人が、公表されている資料をもとに、子どもの健康を最優先にする立場から決めた個人的なルールです。
もしかしたら、東北、関東にいる他のママやプレママの参考になるかもしれないと考え、公表しますが、このルールに従った行動をおすすめするわけではありません。1つの判断材料としてご利用ください。
なお、引用・転載・印刷などによる拡散はご自由にどうぞ。
【結論】
ルール1
水蒸気爆発のような最悪の事態になった場合、スウェーデン国立スペース物理研究所・山内正敏氏の「放射能漏れに対する個人対策(第3版)」(http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html) を参照し、
文部科学省の各都道府県別放射線モニタリングなど(http://eq.wide.ad.jp/index.html)を見て、
半径100km以内であれば、緊急に屋内(出来るだけコンクリート製)に退避し、100km以上でも近くの放射能値情報に随時注意する
居住地近くでの放射線濃度が300μSv/時(=0.3mSv/時)に達するか、ダスト濃度が 500 Bq/m3 に達したら、緊急避難
居住地近くでの放射線濃度が30μSv/時(=0.03mSv/時)に達するか、ダスト濃度が 50 Bq/m3 に達したら、避難の準備を始める
現在、日変化の最低値が5μSv/時ならば、早めに避難する
※東京は現在非該当だが、いつそのような最悪の事態になってもいいように、避難先とそこまでの経路を考え、貴重品と最低限の荷物をまとめておく。屋内退避に備え、数日分の水と食料も準備する
ルール2
低線量の被曝が続く場合には、いざという時の避難先とそこでの生活の段取りを考えておき、1mSv/年を超えたら、できるだけ速やかに避難する
※仮に今のレベルの被曝が続くと、1.75mSv/年となる。したがって、いざという時の避難先(海外)とそこでの生活の段取りを考えはじめる
ルール3
外出時は、なるべく肌を露出しない服装で、帽子・マスクを着用。傘・雨具持参
【根拠、というか、考えたこと】
●妊婦(胎児)や小さな子どもが被曝すると、どうなるか?
まず、この点を整理しておきたいと思います。私が、被曝と聞いてまず連想したのは、広島・長崎の原爆被爆者のことでした。そこで、放射線影響研究所のサイトを見ました。放射線影響研究所の前身は、1947年に米国の原子力委員会の資金によって米国の学士院(NAS)が設立した原爆傷害調査委員会(ABCC)。翌年には日本の厚生省国立予防衛生研究所(予研)が参加して、共同で大規模な被爆者の健康調査に着手しました。どんな調査かというと、1950年の国勢調査で広島・長崎に住んでいたことが確認された人の中から選ばれた約94,000人の被爆者と、約27,000人の非被爆者から成る約12万人の方を追跡調査しています。寿命調査と呼ばれています。1975年にABCCは放射線影響研究所へ再編成されました。
放射線影響研究所によると、原爆被爆者にみられる放射線被曝による後影響(被爆後数年から現在までに現れる影響)の中で最も重要なものはがんリスクの増加で、放射線に起因すると考えられる固形がん(白血病以外のがんのこと)リスクの増加は、被爆の約10年後に始まっています。もちろん、原爆被爆者は大量の放射線を被曝しているケースが多いのですが、被曝している量の少ない方も当然いるわけです。http://www.rerf.or.jp/general/qa/qa8.htmlによれば、寿命調査の対象となっている約94,000人の被爆者のうち、約5万4千人は 爆心地 から2.5km以内で 被曝していますが、残りの4万人は2.5kmよりも遠方での被爆のため、被曝線量は極めて低いと考えられているそうです。そういう方たちは非被爆者と同じがんリスクしか負わない、となるかというと、そうでもないようで、「明らかなしきい線量(それ以下の線量では影響が見られない線量のこと)は観察されていない」と放射線影響研究所は言っています。
原爆放射線により被爆者にがんを生じる確率は、受けた線量、被爆時年齢および性別によります。つまり、受けた線量が多いほど、そして、被爆時年齢が低いほど、リスクが高く、女性は男性よりリスクが若干高いのだそうです。(以上、http://www.rerf.or.jp/radefx/late/cancrisk.html)
次に妊婦さんが被爆する場合、つまり胎児の段階で被爆するとどうなるか、についてです。この場合、生まれた赤ちゃんに重度知的障害が発生する確率は、被曝線量および被爆時の胎齢と強い関係があるそうです。非被爆者に比べて知的障害が多く発生する傾向は、受胎後8-15週で被爆した赤ちゃんに特に顕著で、受胎後16-25週で被爆した赤ちゃんではそれよりも少なく、受胎後0-7週、または26-40週で被爆した赤ちゃんでは全く見られなかったそうです。また、重度の知的障害に至らない場合でも、受胎後8-25週で被爆した子どもに、線量の増加に伴う学業成績とIQ指数の低下がみられ、発作性疾患の発生増加も明らかになったそうです。(以上、http://www.rerf.or.jp/radefx/uteroexp/physment.html)原子力百科事典ATOMIKAによると、知的障害についての線量反応関係は、0.2Gy以上から直線的に増加しているとのこと。
また、原子力百科事典ATOMIKAによると、胎児の段階で被爆した方の発がんリスクは、10才未満までは上昇しなかったが、成人でがんのリスクの上昇が示唆され、そのリスクの大きさは、幼児被爆者と同等であることが判明したとのこと。その他、若年被爆者における発育遅延も指摘されていました。(以上、http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-03-10)
と、大変深刻な話になっていますが、原子力百科事典ATOMIKAによると、原爆被爆者とされる方は、被曝線量が5mSv以上の被爆者で、その平均被曝線量は200mSvもあります。
しかも、京都大学原子炉実験所・今中哲二氏の「原子力発電、チェルノブイリ、そして日本の原発」(www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/im000624.PDF)によると、原爆の場合、爆発時に爆弾から放出される放射線を体の外から一瞬のうちに被曝したのに対し、チェルノブイリは、放射能汚染による体の外からと体の中からの長期間にわたる被曝であり、被曝のしかたが違います。
そこで、今回の福島原発事故と同様、原発事故であり、同じレベル7の事故であるチェルノブイリ事故による被曝の影響を見ていきます。
まず、チェルノブイリ事故による被曝のレベルはどの程度のものだったのでしょうか。原子力百科事典ATOMIKA(http://www.rist.or.jp/atomica/)の「大気圏内核実験当時の体内放射能とチェルノブイリ事故後の体内放射能」によると、チェルノブイリ事故汚染地域住民が、事故後最初の10年間に受けた平均実効線量は8.2mSvと推定されています。最初の10年間の線量が外部被曝の生涯線量の60%、内部被曝の生涯線量の90%と仮定すると、平均生涯実効線量は12mSvとなります。
ここで外部被曝、内部被曝について確認しておきましょう。大気中に飛散、あるいは地面に降り積もった放射性物質を、直接浴びるのが外部被曝、そうした放射性物質を鼻や口から吸い込んだり、食物や水を介して放射性物質を取り込んだりするのが、内部被曝です。原子力百科事典ATOMIKAの「大気圏内核実験当時の体内放射能とチェルノブイリ事故後の体内放射能」(http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-09)によると、チェルノブイリ事故では、農地や牧場が広く放射性セシウムという放射性物質で汚染されました。そのため、放射性セシウムは、食物連鎖をたどって米、野菜、牛乳や肉、魚等の食物中に入りました。この食物を食べると、放射性セシウムが人体へ移行して来ます。これが「食物や水を介して放射性物質を取り込んだり」にあたる部分です。
内部被曝についてですが、身体の中へ入った放射性セシウムは血液に入って、筋肉を始めとしていろいろな組織や内臓へ運ばれて行き、決まった早さ(生物学的半減期という。セシウム137の場合、日本人成人男子で平均およそ90日)でそこから出て行って、体外へと排せつされます。このように放射性物質が代謝や排せつなどによって体外に出ていく場合、体内に残っている放射性物質も自然に半減期(物理学的半減期という。セシウム137の場合30年)によって減っていきます。したがって身体の中に入った放射能が半分になるまでの時間は、二つの過程により減り、これを「実効半減期」と言うそうです。そのようにどんどん体外に排出されていけばよいのですが、食べた食物に入っていた放射性セシウムが身体の外に出ない内に、また次の食物を食べる、それを繰り返すと、体内放射能は次第に高くなって行きます。その高くなり方は、実効半減期が長いほど高くなります。また、食物中の放射能が大きいほど、体内放射能は大きくなります。
原子力百科事典ATOMIKAの「大気圏内核実験当時の体内放射能とチェルノブイリ事故後の体内放射能」(http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-09)によると、放射線医学総合研究所では長年にわたって全身計数装置(ホールボデイカウンタ)を用いて日本人の成人男子の放射性セシウムを測っており、放射性セシウムの日本人の体内放射能への影響の大きい順に並べると、米国とソ連が1961年から1962年に行った大気圏内核実験、中国が行った大気圏内核実験(1964年から1980年)、そしてチェルノブイリ事故、となるそうです。日本人の成人男子の放射性セシウムの最大の年平均体内量は1964年の531Bqでしたが、この影響は1.5年の半減期で減少したとのこと。また、1959年から1994年までの日本人成人男子群の累積内部被曝線量は105μSvと推定されています。
小さな子どもの累積内部被曝線量はわかりません。ただ、1966年に日本人母乳児について生後2か月から6か月まで計測された体内量の推移のデータがあり、そこでは成長に伴い母乳摂取量は増加するにもかかわらず、変化が見えません。この点は、食物に含まれるセシウム137が減少している時期であったので、母親の体内量も減少し、母乳を介して摂取され乳児に移行するセシウム137の量もまた、減少していたからだと分析されています。体内量が変わらないで体重が増加したため、体内濃度(体内量/体重)は顕著に減少します。「しかし6か月時の体内濃度は分娩1ヵ月前の母親の体内濃度のなお2倍であった」のです。これはどういうことなんでしょうか……胎盤や母乳を介して移行する際、濃縮されるんでしょうかね……よくわかりません(以上、原子力百科事典ATOMIKA「フォールアウトからの人体内セシウム(40年の歴史)」http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-01-04-11)。
チェルノブイリ事故の話に戻りますが、実は「最初の10年間の線量が外部被曝の生涯線量の60%、内部被曝の生涯線量の90%と仮定すると」が管理人にはよくわかりません。チェルノブイリ事故の場合、まず大量に放射性物質が飛散したので、はじめ外部被曝はひどいが次第に収束する、しかし、内部被曝は生涯続く、というイメージがありました。そのイメージからは、例えば、最初の10年間の線量が外部被曝の生涯線量の「90%」、内部被曝の生涯線量の「60%」と仮定するのなら、理解できます。でも逆なんですよね。体内に入った放射性物質は10年でかなり減るけれども、土に降り積もった放射性物質からその後もずっと、直接放射線を浴び続ける、ということなのでしょうか? よくわかりません。
もっとも、これは素人の誤解かもしれないので、いったん脇へ置いて、先へ進みます。ともかく、チェルノブイリ事故汚染地域住民が事故後最初の10年間に受けた平均実効線量は8.2mSv、平均生涯実効線量12mSvと推定されたわけです。原爆被爆者の平均被曝線量200mSvという数字に比べると、今回の福島原発事故の影響を考える際に参考になりそうです。
それでは、チェルノブイリ事故による被曝の影響はどんなものだったのでしょうか。原子力百科事典ATOMIKAは「1990年から1991年にかけて国際諮問委員会のもとで行われた国際チェルノブイリ計画によると、現在の所、事故時に高線量を被曝した人以外、周辺の一般公衆のあいだでは放射線被曝に由来すると考えられる健康影響(疾病、障害の発生)と自然発生率との有意の差は確認できない。しかし、将来にわたってのある種の腫瘍の発生率増加の可能性を否定できるほどの証拠はなく、今後の継続的調査が必要である」と説明しています(http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-03-01-06)。つまり、その時点では、汚染地域の住民の健康影響は認められませんでした。しかし、将来も健康影響がないとは断言してくれていないのです。ちょっと気になります。
そして、その不安は的中します。京都大学原子炉実験所・今中哲二氏の「原子力発電、チェルノブイリ、そして日本の原発」(www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/kouen/im000624.PDF)によると、1992年9月にNature誌に発表された論文は、ベラルーシの汚染地域での小児甲状腺がんの急増を示していたとのこと。それ以外にも、新生児の先天的障害、子どもたちの病気の増加がみられたそうです。前者については、チェルノブイリ事故以前と以降のデータを比較すると、汚染レベルが大きいほど、事故以降の増加が大きいとのこと。後者については、被災したベラルーシの子どもたちの病気罹患率(1992年)を、ベラルーシ全体の値と比較すると、ほとんどの病気で罹患率の大幅な増加が認められるそうです。もちろん、事故による避難、移住といった生活変化、経済状態の悪化なども考えると、そのすべてが、放射線被曝による直接的な健康影響とは言えないでしょうが、被災した子どもたちの健康状態が悪化していることは間違いなく、それはそれで心配です。
●悲劇を避けるためにどうしたらいいか?
1996年4月26日に放送されたNHKスペシャル「終わりなき人体汚染~チェルノブイリ原発事故から10年~」の最初の場面は、事故当時3歳だった少女の葬儀でした。ガンで亡くなったそうです。今3歳の女の子を持つ親としては、胸をえぐられる思いでした。
どうも、長期に渡る低線量被曝が人体に与える影響はまだまだわからないことだらけのようです(被曝と罹患の因果関係の証明がとても難しいという事情もあるようです)。 放射線影響研究所は「放影研のこれまでの調査で明らかになったこと」(http://www.rerf.or.jp/rerfrad.pdf)で、がんのリスクは被曝線量に直線的でしきい値がないという考え(国際放射線防護委員会などの考え)で計算すると、10mSvで約1.005倍と予想しています。つまり、通常200人ががんになる場合に、10mSvの被曝によって201人ががんになる、ということです。その数字を見て、「だから、大したことないさ」と言う人もいるでしょう。ただ、小さい子どもの親としては、そうは言えません。「201人目がもし我が子だったら……いや、小さい子どもはリスクが高いから202人目もいるかもしれない、まして小児甲状腺がんであれば……」と考えるからです。
それでは、わが子を201人目や202人目のがん患者にしないためには、どうしたらいいのでしょうか。
まず、考えておきたいのは、そもそもこの後に及んで何かをやる意味があるのかどうか。もしかしたら、「いまさら何をやってもしょうがない」のではないか、という点です。管理人は1969年生まれですから、放射性セシウムをたっぷり体内に蓄えた両親から生まれ、放射性セシウムをたっぷり浴びながら成長してきたことになります。そんな親から生まれた我が子は、既に放射性セシウムの影響を受ける定めにある……とは限りません。なぜならば、「これまでの研究では、被爆者の子どもへの遺伝的影響は認められていません」(http://www.rerf.or.jp/rerfrad.pdf)とされているのですから。
しかも、3月21~22日に福島第1原発事故で東京に降り注いだ放射性セシウムは、大気圏内核実験で1年間に降った量の3倍近くあったそうです。山梨日日新聞web版(2011年03月25日(金)18時11分 「降下セシウムは核実験時代の3倍 「早く沈静化を」と専門家」http://www.sannichi.co.jp/kyodo/news2.php?genre=Science/Environment/Health&newsitemid=2011032501000755)によると、放射線医学総合研究所の市川龍資元副所長(環境放射能)の資料と、文部科学省の発表データを比較したところ、
63年に東京で確認されたフォールアウト(放射性降下物)のセシウム-137→年間1平方キロメートル当たり1924メガベクレル
3月21日午前9時~22日午前9時に東京で降下物として検出したセシウム-137→1平方キロメートル当たり5300メガベクレル
となり、約2.8倍だったことがわかりました。降雨のため降下物が多かったということですが、事故の収束までまだまだ時間がかかることを考えると、「いまさら何をやってもしょうがない」どころか、「今行動しないで、いつ行動する!」というレベルなのではないでしょうか。
そこで次に、どういう行動をするか、が問題になります。
ルール1。
水蒸気爆発のような最悪の事態になった場合、スウェーデン国立スペース物理研究所・山内正敏氏の「放射能漏れに対する個人対策(第3版)」(http://www.irf.se/~yamau/jpn/1103-radiation.html) を参照し、
文部科学省の各都道府県別放射線モニタリングなど(http://eq.wide.ad.jp/index.html)を見て、
半径100km以内であれば、緊急に屋内(出来るだけコンクリート製)に退避し、100km以上でも近くの放射能値情報に随時注意する
居住地近くでの放射線濃度が300μSv/時(=0.3mSv/時)に達するか、ダスト濃度が 500 Bq/m3 に達したら、緊急避難
居住地近くでの放射線濃度が30μSv/時(=0.03mSv/時)に達するか、ダスト濃度が 50 Bq/m3 に達したら、避難の準備を始める
現在、日変化の最低値が5μSv/時ならば、早めに避難する
東京は現在非該当だが、いつそのような最悪の事態になってもいいように、避難先とそこまでの経路を考え、貴重品と最低限の荷物をまとめておく。屋内退避に備え、数日分の水と食料も準備する
ルール2。
低線量の被曝が続く場合には、いざという時の避難先とそこでの生活の段取りを考えておき、1mSv/年を超えたら、できるだけ速やかに避難する
ルール2の「1mSv/年」は、国際放射線防護委員会(ICRP)より勧告されている一般公衆の年実効線量限度です(原子力百科事典ATOMIKA「作業者と一般公衆の防護」http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-04-01-11)。チェルノブイリ事故汚染地域住民が、事故後最初の10年間に受けた平均実効線量8.2mSv、平均生涯実効線量12mSvといった数字との比較においても、小さい子どもの被曝線量は1mSv/年までにしておきたいと考えました。
さて現在、低線量の被曝が続いていますが、実際の被曝線量はどのくらいでしょうか。
放射線医学総合研究所「放射線被曝に関する基礎知識 第6報」(http://www.nirs.go.jp/information/info.php?i14)は、東京に住んでいる大人の3月14日~4月11日(約1ヶ月間)の累積放射線量を約120μSvとしています。ちなみに、さきほど書いたように、1959年から1994年までの日本人成人男子群の累積内部被曝線量は105μSvと推定されています。36年間の累積内部被曝線量を超える被曝(外部被曝も含めてですが)を、たった1か月ほどでしてしまったのですね。
では、放射線医学総合研究所の計算を参考にしながら、東京に住んでいる子ども(2-7歳)の3月14日~4月11日(約1ヶ月間)の累積放射線量を計算してみましょう。
1大気中の放射性物質による外部被曝線量
→文部科学省が発表したデータ(http://mextrad.blob.core.windows.net/page/13_Tokyo.html)から累積し、通常時の平均値分(天然の放射線による被曝の分)を除く
→約16μSv(1日8時間屋外に居たとして)
※「放射線被曝に関する基礎知識 第6報」の成人の値と同じ
2地面に降り積もった放射性物質による外部被曝線量
→「放射線被曝に関する基礎知識 第6報」では言及なし
3水道水による内部被曝線量
→こぐま保育園サイト「子どもの上手な水分補給」(http://www3.ocn.ne.jp/~koguma/kennkou/kennmem/26.htm)などを参照し、1日あたり100ml×17kg=1700mlの水分補給が必要で、その2/3にあたる1333mlの水道水を飲んだとして、東京都が発表したデータを用いる
→
ヨウ素-131:0.10 x 8.59 x 1.33 x 29 = 33μSv・・・(1)
セシウム-137:0.0096 x 0.45 x 1.33 x 29 = 0.17μSv・・・(2)
セシウム-134:0.013 x 0.28 x 1.33 x 29 = 0.14μSv・・・(3)
(1) + (2) + (3) = 33.31 ≒ 33μSv
4食べ物による内部被曝線量
→仮に、1kg当たりのヨウ素-131、セシウム-137、セシウム-134の濃度がそれぞれ20、1、1ベクレルの牛乳、それぞれ2、1、1ベクレルの魚、それぞれ150、10、10ベクレルの野菜を約1ヶ月間、毎日食べたとする
→約69μSv
※計算式がわからないので、「放射線被曝に関する基礎知識 第6報」の成人の値を流用
5空気中の放射性物質を吸い込むことによる内部被曝線量
→東京都労働産業局が発表した「ちり」の中の放射性物質のデータを用いる
→約21μSv
※計算が大変なので、「放射線被曝に関する基礎知識 第6報」の成人の値を流用
1から5を足しあわせると、約1ヶ月間で約139μSvを受けたことになります。大人の累積放射線量約120μSvより若干多いです。
仮にこのレベルの被曝が1年間続いたとしましょう。29日分で139μSvなので、1年(365日)分は1749μSv、つまり1.75mSvで、1mSv/年を超えます。したがって、いざという時の避難先とそこでの生活の段取りを考えはじめます。
次に、このレベルの被曝が1年間続くかどうかも考えます。1年続いたら、即避難です。
その前に、さきほどの計算が妥当かどうかについて考えておきましょう。
まず1については測定場所が問題です。東京都健康安全研究センター「当センターによくいただく質問例」(http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/FAQ.html)によると、「環境放射能に関しては当センターの建物の屋上(地上18m)に設置されたモニタリングポストで計測を行なっております」。子ども目線で言えば、地上50cmとか1mくらいで計測していただきたいところです。そうした場所で計測した場合、おそらく大気中の放射性物質による外部被曝線量の数値はかなり上がることでしょう。
2については、子どもは背が低いうえ、砂場遊びをしたり、落ち葉に触ったり、土の上を走りまわったり転んだりで、地面に積もった放射性物質の影響を受けやすいと思われます。公園の砂場辺りに積もった放射性物質を測定して、算定に組み込んでもらわないと困ります。
4の、牛乳について1kg当たりのヨウ素-131、セシウム-137、セシウム-134の濃度がそれぞれ20、1、1ベクレル、魚についてそれぞれ2、1、1ベクレル、野菜についてそれぞれ150、10、10ベクレル、という値は、「厚生労働省3月19日~4月11日発表の流通品の放射線検査(乳11サンプル、野菜241サンプル、水産物5サンプル)の結果の平均値に近い値を用い、セシウム134と137の合計のみが示されている場合にはその比が1:1であると仮定しています」とのことです。計算式がわからないうえ、ヨウ素-131の実効線量係数は子どものほうが大きいけれども、子どもは食べる量が少ないので、便宜的に成人の値を流用しています。ただ、食べる物や量の個人差も大きく、検査の正確性、誤出荷・誤配送の問題含め、算定とその評価が難しいところです。
5については、ヨウ素-131、ヨウ素-132、セシウム-137、セシウム-134の実効線量係数は成人より子どものほうが大きいけれども、呼吸率は成人より子どものほうが少ないので、成人の値を流用しています。ただ、2でも書いたように、子どもは背が低いうえ、砂場遊びをしたり、落ち葉に触ったり、土の上を走りまわったり転んだり、木々の間に分け入って探検ごっこをしたりで、成人より空気中の放射性物質を吸い込みやすいと思うのです。東京都労働産業局が採取した空気がどんな場所で採取されたものか、わかりませんが、ぜひ公園の砂場や、鬱蒼と茂った林の中で採取してもらいたいです。そうした場所で計測した場合、おそらく空気中の放射性物質を吸い込むことによる内部被曝線量の数値はかなり上がることでしょう。
以上から、さきほどの計算は妥当でない、とまでは言えませんが、実際より小さい数値である可能性が高いです。
では、改めて、このレベルの被曝が1年間続くかどうか。
まず、3月中に発生したような大量の放射性物質の降下は、その後発生していないようです。今後も発生しないとすれば、1大気中の放射性物質による外部被曝線量のレベルは下がるでしょう。とすれば、2地面に降り積もった放射性物質による外部被曝線量と、3水道水による内部被曝線量、5空気中の放射性物質を吸い込むことによる内部被曝線量のレベルも、いずれは下がっていくのかもしれません。ただ、判断にはきめこまやかな測定が必要ですし、東京の公園の土なども除染が必要になるかもしれません。
一方で、4食べ物による内部被曝線量のレベルは上がる可能性があります。
さきほど書いたように、放射性物質は食物連鎖をたどって人体へ移行して来るわけですが、その過程で濃縮される可能性があるからです。サイエンス・メディア・センターの「食物連鎖における放射性物質汚染:デイビッド・ウォルトナ=テーブス教授」(http://smc-japan.org/?p=1620)によると、「放射性核種のいくつかは食物連鎖の階層が上がるにつれて濃縮される可能性がある。特に水界生態系においてこの可能性が高い。他の生物では、放射性核種は体内に取り込まないように排除される場合がある。例えば、牛乳中のヨウ素131の濃度は、通常、乳牛が消費する植物中に含まれるヨウ素131の濃度の10分の1である」とのこと。共同通信(2011/04/06 11:16、http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011040601000151.html)によると、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は、放射性物質が魚介類の体内に蓄積され濃縮される可能性について、セシウムの場合、軟体動物や海藻の濃縮率が50倍であるのに対し、魚類は400倍、放射性ヨウ素の場合は逆に、魚類で15倍だが、海藻で1万倍になると指摘しています。
したがって、4食べ物による内部被曝線量のレベルは、調査や検査の適切さ、正確さ、誤出荷・誤配送など流通の信頼性、といった事情に依存します。
以上から、このレベルの被曝が1年間続くかどうかは、きめこまやかな測定・除染がなされるかどうかや、調査や検査の適切さ、正確さ、流通の信頼性、といった事情に依存します。そこで、きめこまやかな測定・除染がなされ、調査や検査が適切、正確で、流通の信頼性が確保できれば、おそらく1mSv/年を超えないだろうと考えて、今まで通りの生活を続けます。しかし、きめこまやかな測定・除染がなされず、調査や検査が適切でも正確でもなく、流通の信頼性も確保できないのであれば、1mSv/年を超えたと判断し、即避難します。避難先ですが、「きめこまやかな測定・除染がなされず、調査や検査が適切でも正確でもなく、流通の信頼性も確保できない」となれば、事情は西日本などでも大して変わらないでしょうから、できれば海外にします。
ルール3。
外出時は、なるべく肌を露出しない服装で、なるべく帽子・マスクを着用。傘・雨具持参。
「明らかなしきい線量(それ以下の線量では影響が見られない線量のこと)は観察されていない」と放射線影響研究所は言っています。とすれば、被爆する線量は少なければ少ないほど、リスクも少なくなるはずです。