みーちゃんは学校で「お知らせ係」をしています。
聞きなれない係だと思います。
それもそのはず、担任の先生がハプニング的に新設した係なのです。
ことのおこりは7月くらいだったと思います。
海外在住のお子さんが、夏休みに日本に帰国し、滞在期間だけ日本の小学校に体験入学しよう、という趣旨で、みーちゃんのクラスにやってきました。
みーちゃんは新しいクラスメートに興味をもち、彼女が住んでいる国について知りたいと考えました。
そして、新聞係に、調べて掲載してくれるように頼みました。
しかし、新聞係は今、クイズ(なぞなぞだったかも)に夢中。
断られてしまいました。
そこで、担任の先生に相談したところ、「お知らせ係」を新設して任命するから、自分で調べて「お知らせ」を書いて貼り出しなさい、と言われました。
で、みーちゃんは、そのとおりにしたわけです。
そのお知らせの出来がよかったのかどうか、9月に入って、先生から「パラリンピックのお知らせを作って」とオーダーが入りました。
しかし、自分から言い出したテーマではないので、なかなか火が付かず、パラリンピックが閉会してもほったらかし。
テレビでパラリンピックの映像を見せるなど、関心をもつように仕向ければよかったのですが、忙しくてそこまではできず。
もちろん、お知らせ制作は義務ではないので、スルーしてもよいのですが、私もみーちゃんに(後述するような理由から)パラリンピックについて深く知ってほしいと思いましたし、先生がみーちゃんの、自分で調べるのが好きなところ、学校の授業では物足りないと感じているところを見抜いて、わざわざ声をかけてくださった、と感じたので、その思いに応えさせたくて、「やりなさい」と強く言いました。
そうしたら、なんてこっちゃ、ウィキペディアを丸写ししはじめました。
何ページの大作になることか、こりゃあかん、ということで、私が原稿を作り、写真を選んで、清書だけさせたのが、こちらです。
その前に説明が必要ですね。
なぜ日本は「共感教育」なのか?で述べたように、私は、日本の作文教育には、「(大人から見て)子どもらしいという、内容的な“型”」があると考えています。
私は、そういう、「自由に書きなさい」と言いながら、書くべき内容が決まっている、みたいな作文が好きではありません。
だから、「多面的に評価」って何?では、大学入試改革への対応として「具体的に親としては何をすればいいのか」の中で、
・正しい日本語、美しい日本語が使えるように応援すること
・(今多くの日本の学校で書かせているような「気持ち」重視の作文や読書感想文ではなくて)論理的な小論文を、日本語か英語で書けるように応援すること
と書きました。
その具体的実践として、私は、学校から作文や読書感想文の宿題が出ると、(自発的に書きはじめるなら放っておくのですが、だいたい「さくぶん、きらい~」と言ってなかなかやらないので)本人に宿題のテーマについて質問をして、その内容をもとに、ほぼ口述筆記させています。
だんだん、最初の一文を書かせた辺りで、「あとはかける」「わかった」などと言って一気に書き出すようになりましたが、テーマや体調によっては最後まで口述筆記のときもあります。
今回のパラリンピックのお知らせも口述筆記をしようかと思ったのですが、文章量があり、私の拘束時間が長くなってしまうので、先にお手本(下書き)を完成させておいて清書をさせた、というわけです。
という次第で、この「お知らせ」は、基本的に子どもの作文という位置づけであり、あまり手をかけていません。
参照記事からつまみ食いして、ちょこちょことコピーしたり、平均的な小学3年生でもわかる表現に改変したり、です。
だからこそ逆に、文章を書くのが苦手な親御さんにも参考にしてもらえるかな、と思い、公開します。
なお、こうした経緯から制作しているので、著作権への配慮は甘いです。
公開の趣旨にかんがみてご容赦いただければありがたいですが、ご指摘があれば削除いたします。
以下、制作のポイントを解説します。
基本方針は、
小学3年生が理解できて、興味をもてる内容にすること。
知らないことやわからないことは、友だちや親に聞いたり自分で調べたりするきっかけになるように、説明し過ぎないこと。
2020年の東京パラリンピックへの関心が高まる内容にすること。
もちろん、パラリンピック自体への理解が深まること。
「パラリンピック自体への理解」には2つあります。
1つは、パラリンピックの意味が変わりつつあることへの理解です。
「正直言って、オリンピックは好きだけど、パラリンピックには興味ない」という人は多いと思いますが、これからは認識を改めたほうがいいです。
お知らせ4ページ目で触れているマルクス・レーム選手は、オリンピックに出場するのに必要な数字(記録)を出しており、今回のリオオリンピックへの出場を希望していました。
残念ながら、出場は認められませんでしたが、4年後の東京オリンピック・パラリンピックのときには、さらに義足の性能は上がっているはず。
レーム選手やほかの選手がオリンピックへの出場を希望したとき、認めるべきでしょうか?
仮に認めなかった場合、東京パラリンピックで、レーム選手らがオリンピックの金メダル記録を上回る記録を出す可能性は、十分にあります。
そうなると、どこまで記録が伸びるのか、という興味から、俄然、パラリンピックを観るのが面白くなってきますし、なぜ義足をつけた選手はオリンピックに出られないのか、オリンピックとはそもそも何か、という本質までさかのぼって議論せざるをえなくなるでしょう。
ピンとこない方がいたら、Eテレで放映された地球ドラマチック「義肢がつくるミラクルボディー!?」がおそらくNHKオンデマンドで観られると思うので、ぜひご覧ください。
さて、もう1つは、オーソドックスな理解です。
これからは「高度な事務処理能力」が必要で述べたように、自分の日常生活とは直接関係ないように思える出来事を“他人事”とせずに正当な関心をもち(知的好奇心)、自分が経験したことのない事柄についても思いを馳せ(想像力)、そうした出来事や事柄を整理し直し、組み合わせて、納得感のある解を導き出す能力、つまり、正解がない問題を手際よく解く能力を、私は「高度な事務処理能力」と呼んでいますが、この能力を鍛えるテーマとしてパラリンピックは最適だと思います。
その具体例が、実は1つ目の理解として述べたことだったりするわけです。
なお、「基本方針」で、興味をもつ、聞いたり調べたりするということについて言及しましたが、それは、いわゆる「詰め込み式」とは反対の「探究型」の学びそのものです。
上で述べた「高度な事務処理能力」や、続編である今どきのリーダーシップのありかたで触れた「主体性」、また、東京の私立学校には2種類あるや日本における学歴と階級と財力の関係で触れた「21世紀型スキル」につながりますね。
少し詳しく見ていきましょう。
まず、1ページ目。
冒頭部分は、ウィキペディア丸写し部分から抜粋し、みーちゃんの痕跡を残しました。
「注目せんしゅ」のザナルディ選手は、海外で有名だということ、(伝統的なパラリンピックのイメージを体現した)困難を乗り越えた不屈の精神の持ち主であること、さらに、F1と聞くと興味をもつ男子がいるかもしれない、と考えて選びました。
パラリンピックがどういうものかわかるように、写真は、ザナルディ選手の身体がよくわかり、かつ勝利のポーズのものを探しました。
2ページ目。
森下友紀選手については、まず、この写真を使いたいと思いました。
パラリンピックというものが一発でわかるインパクトがあったからです。
森下選手についても調べたのですが、初出場なので、あまり情報がありませんでした。
しかし、19歳と若いことで子どもたちは身近に感じるでしょうし、おそらく東京パラリンピックでも活躍してくれるだろう、と考え、掲載しました。
国枝慎吾選手(照明で写真が光ってしまいました…)は、手術の影響か、今回はあまり調子がよくなかったようですが、UNIQLOの店頭ポスターやチラシを通して子どもたちは知っていると思ったので、掲載しました。
フェデラー選手の言葉も、パラリンピックについて考えさせるため、ぜひ紹介したいと思いましたし。
3ページ目。
自転車タンデムの鹿沼由理恵選手と田中まい選手については、(みーちゃんの学校の)運動会前のこの時期に、力を合わせることの大切さを印象付けたかったのと、2人の心の葛藤を描いた記事を読んで印象に残っていたのと(その内容自体は小学生のレベルを超えていたので、取り上げず)、2人乗り自転車に乗っている構図が、何というか、選手とサポートする健常者が対等に見えることから、取り上げました。
あと、ボッチャはどんな競技か、自分自身が知りたかったので(笑)、取り上げました。
4ページ目。
陸上走り幅跳びは、上で述べたようなパラリンピックの意味の変化、東京オリンピック・パラリンピックの見どころ紹介として、ぜひ取り上げたいと思いました。
写真も、山本選手の素晴らしい写真がありました!
5ページ目。
まとめも兼ねて、日本のメダル数。
写真をウィルチェアラグビーにしたのは、五郎丸選手の活躍でラグビーに興味をもった子どもが多いだろうということと、担任の先生が元ラガーマンなので、敬意を表しました(笑)。
参照サイトは、サイト名だけで、ページタイトル、記事タイトルは省略しました。
全体の構成について付け加えます。
「注目せんしゅ」「注目きょうぎ」は、パラリンピックのサイトを参考にしつつ、選んだ写真と書きたい内容を考えて、うまく収まるように決めました。
例えば、自転車タンデムの鹿沼選手は「注目せんしゅ」としてもよかったのですが、パイロットである田中選手にも注目したかったのと、2人の呼吸が合わないといけないというタンデムの特徴にフォーカスしたかったので、「注目きょうぎ」にしました。
陸上走り幅跳びの山本選手についても、「注目選手」としてもよかったのですが、上で述べたような、レーム選手や義足の進化にも注目したかったので、「注目きょうぎ」にしました。
後から、森下選手を1ページ目の下に、2ページ目の上半分をザナルディ選手にしたほうが収まりがよかったなあ、と思いましたが、上記のように、手をかけない方針だったので、直しませんでした。
以上です。
この「お知らせ」を起点として、これからの4年間、パラリンピックやオリンピック、さらには人間と科学技術について、親子で考えていく予定です。
みなさんも、親子合作で「お知らせ」を作ってみませんか?