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日本の若者の海外進出は戦略の練り直しが必要だと思う

現代ビジネスの「知の大国アメリカ~ランド研究所から~」アメリカの学生が史上最も厳しい競争をしている一方、日本のエリートは少子化と入学定員数の増加で劣化している!で、田村耕太郎氏が、
「幹部が『日本人が欲しい』とあれだけ懇願してきたから、それに応えてふさわしい人物を送り込んだのに」
「応援していた女子高校生が、目指していたアイビーリーグの名門大学に合格できなかった」
と書いておられます。
また、
「私の「秘蔵っ子」と言える若い男性が、エール大学が独自に行う次世代リーダー育成プログラム「エール・ワールド・フェロー(YWF)」に選ばれなかった」
「彼は最終選考まで残りながら、惜しくもそこで勝ち残ることができなかった」
とも。
つまり、
「アメリカでは…昔ならハーバードやエールに受かっていた学生が落とされている」

世界中から「我こそは!」という学生が押し寄せてくるわけですから、そりゃそうですよね。
単純に考えても、WASPと言われるアメリカの支配者階級の学生や、日本の学生の座席が減っていくのは当然です。

同じく現代ビジネスの「世界のトップスクールで学ぶ日本人」第一回 ハーバード大学1年生廣津留すみれさん 「大分の公立高校で過ごし、高1まで海外に出たことがありませんでした!」で福原正大さんが紹介しているように、
公立高校の「東大クラスで日本の大学受験対策の勉強をこなしながら」
「3歳から続けているバイオリンで高1の時に国際コンクールに出場して優勝し、高2の春にはカーネギーホールで演奏し」、
日程が重なったために、熟慮の末に、周囲を説得して、修学旅行より「大好きな中村勘三郎さんの襲名披露公演」を選ぶ(文脈からそう読める)
ような、群を抜くアピールポイントがないと、これからの日本の学生は選んでもらえないと思います。

あと、私がもしハーバードやエールの試験官だとして、もしインドの学生と日本の学生が同じ点数だったら、インドの学生を採るだろうな、と思いますね。
それは、それぞれの出身国が今後、世界に占めるであろう位置を考えれば、日本よりインドを選ぶだろう、という意味もあります。
そのほうが世界に対して大学の影響力を行使できますからね。
さらに、印象論みたいになってしまいますが、成長している国の人って、勢いや輝きがあるように思うんです。
これまでの日本の学生は、基本的に世界に出る人は少なかったけど、ひとたび出た場合は、その勢いや輝きで難関を突破していった部分もあるような……。
ぬるま湯のような日本を飛び出して行った開拓者たちに実力がなかった、という意味ではないんですよ。
誰が選ばれてもおかしくないようなステージにおいては、実力に勢いや輝きが伴わないと選ばれない、という話です。

だとすると、これから世界の難関を目指す日本の子どもが何をすべきかと言うと、実力をつけるだけでなく、勢いや輝きを身につけることじゃないでしょうか。
「日本、落ちぶれゆく国と思ってたけど、やっぱ面白いとこあるじゃん」
と日本を、日本人を、再発見してもらえるような何か。
これまでの日本人がまとっていた勢いや輝きが何だったかと考えると、日本という国の経済力、モノづくりの力でしょうかね、やっぱり。
日本的な美意識、文化もあったと思うけど、それを評価できる外国人は少ないですから、再構成というか、時代に合わせた戦略練り直しが必要な気がします。

では、これからの日本の子どもが身につけるべき勢いや輝きは何でしょう。
前提として必要なのは“敵を知る”こと。
今世界をリードしているのは欧米なんですから、欧米についてきっちり学習する。
同じく現代ビジネス「知の大国アメリカ~ランド研究所から~」フランスに渡り、フランス料理で戦う若き日本人シェフは、なぜ「完全アウェー」の中で勝ち続けられるのかで田村耕太郎氏が、20代で『ミシュラン』の一つ星を獲得した唯一の日本人であり、6年連続で星を維持してきたフランス料理の松嶋啓介シェフを紹介していますが、記事の中で、松嶋さんも、
「僕は、フランス人以上にフランス文化も勉強もしていました。それが、本場で評価された理由の一つになったと思っています。フランス人のスタッフに対して、僕がフランスの文化や歴史を教えることも多々ありました」
と語っています。
上述した廣津留すみれさんも、国際コンクールで優勝できるレベルまでバイオリンをやっています。

そのうえで、日本的な美意識、文化を、なんとなくではなく意識的に身につける。
廣津留さんも、修学旅行より中村勘三郎さんの襲名披露公演を選ぶくらいに歌舞伎に傾倒しています。

さらに、日本人ならではの五感や身体感覚を活かす。
上述した松嶋さんも、
「僕は幼少の頃から味にうるさく」
「祖父の実家が農家だったため、子供の頃から素材の良いものを食べられる機会が多かった」
と言っています。
普通の日本人も、世界の中ではけっこう味覚が発達しているほうじゃないかと思いますが、松嶋さんは段違いに鋭敏な味覚を持っているのだろうと想像します。
『たたずまいの美学――日本人の身体技法』(矢田部英正著、中公文庫)はものすごく面白い本なんですが、この本によると、ドイツ人の哲学者ヘリゲルは、日置流弓術の名人、阿波研造から指導を受けて、「日本古武術の世界では、筋肉を増強させるためではなく、『力を入れない』ために神経を集中させなければならないこと」を発見して、「人間の力の源を四肢の骨格筋に求めようとする、ギリシア以来のヨーロッパ的な常識をまったく覆されてしま」ったそうです(173~175ページ)。
今、私も含めて普通の日本人は、日本古武術に見られるような伝統的な日本人の身体感覚を失いかけています。
それを取り戻すことができれば、世界で闘う際の武器になるような気がするのです。

【追記】(2013.4.18)
このエントリの中でご紹介しているハーバード大学1年生廣津留すみれさんのお母様が経営しておられる株式会社Dirigoのサイトで、このエントリをご紹介いただきました。
「日本の若者の海外進出?最も効果的な戦略はこれだ!」です。
ぜひご覧ください。
「点数云々の前に、自分の好きなことをなんでもいいから見つけて欲しいです」という一節に深く同意しました。

さらに、廣津留すみれさんのお母様とのやり取りを踏まえて、「力を入れない、脱力」は大切というエントリを書きました。
よろしければ、こちらもどうぞ。

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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