「東大入試 その1」で取り上げた東大の入試改革に関連して、
脳科学者・茂木健一郎先生が「東京大学Liberal Arts Collegeに関する私案」を発表しています。
「クオリア日記」2011/10/09です。
まず、私案の前提となる現状認識と改善のポイントについて、茂木先生はどう考えているのでしょうか。
ここから見ていきましょう。
ペーパーテストで測ることのできる「学力」に基づいて、公正に入学者を選抜することで、東京大学は歴史を刻んできた。
しかし、そのために外国から学部生をあまりとれない「ガラパゴス化」が懸念される事態となっている。日本語を母語として、日本で教育を受けた人以外には、「本体」の学部入試に合格することは難しい。結果として、学部学生における国際化、多様性の確保は十分ではない。Times Higher Education Supplementが発表する大学ランキングでも、東京大学は学術面での評価は高いが、国際化指数において大きく見劣りする。THESを初めとするランキングが唯一の指標ではもちろんないが、国際化を学部学生のレベルから始めることは、東京大学のより一層の発展に不可欠だろう。
茂木先生は、このように書いています。
先生のおっしゃる通りだと思います。
私の入学当時には「帰国子女枠」というのがあって(今はどうなんでしょうか……)、その枠で入った人たちとは友達になりましたが、みんな「英語と同じくらい日本語を話せる日本人」でした。
みんな、見た目がアメリカンスクールっぽかったので“国際的な香り”はしましたが、そのくらいでは国際化、多様性の確保に十分とは言えないのは当然ですよね。
で、このような現状認識のもと、茂木先生が提示している私案というのは、いったいどのようなものなのでしょうか。
現行の理一、理二、理三、文一、文二、文三の区分、定数、入試はそのままに、あらたに最初は定員100人程度でスタートする、英語で教育を行うLiberal Arts College(以下、略称東京大学LAC、University of Tokyo Liberal Arts College)をつくることを提案したい。
と茂木先生は言っています。
イメージ的には、上智大学の比較文化学部(通称「比文」。国際教養学部に改称されたようですね)に近い印象かな。
悪くないと思います。
ただ、「東京大学Liberal Arts Collegeに関する私案」のコメント欄でも指摘がありましたが、真に身になるのは、外国語ではなく母語による学習ではないかと思うのです。
その点は茂木先生も考慮していて、
以上の改革案は、明治の「移行期」において英語によって講義を行った時期を除いて、日本語で高等教育を行い、学問を究めることを可能にしてきた先人たちの努力をないがしろにするものではもちろんない。とりわけ、文科系の学問において、「和製漢語」を生み出し、日本語で高度な学問を行うことができるようにしたことは、先人たちの偉大な業績であった。今後も、日本語による研究、教育は重要であり続ける。将来的に大学の教育を全て英語でやるべきだ、というような愚かなことを主張しているわけではもちろんない。
と書いています。
完全に英語に移行する、という話ではないので、茂木先生案もいいんじゃないかと思っています。
積極的に賛成するわけではないけど、反対もしない、という感じです。
なんで反対をしないかと言うと、
「イエズス会のやることを真似して、失敗することはないだろう」
と思うから。
イエズス会というのは、カトリックの修道会の一つで、上智大学の運営母体です。
けっこう東大出身の修道士が多いと聞きます(ちゃんと統計をとったわけじゃありませんが、“カトリック業界”に詳しい人の話です。少なくともそういうイメージを持たれています、と言いたいわけです)。
で、その昔、地球の反対側までフランシスコ・ザビエルらを派遣したくらいに攻撃的、というか、先見の明がある人たちなわけです。
修道会っていうのは面白くて、血はつながっていないのに一貫性があるんですよね~
それはまあ置いといて、そんなこんなで、
「東大に比文みたいのがあってもいいんじゃない?」
というより、
「なんで今まで、そういう学部がなかったんだ?」
と思うのです。
「東京大学Liberal Arts Collegeに関する私案」には、こんないい加減な意見(自分ではいいとこついてると思っているんですけどね)じゃなくて、建設的で真摯なコメントが多数寄せられていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
Trackback
トラックバックはありません
Comment
コメントはありません