数日前、はてなブックマークでRocketNews24というサイトの日本人女性が見せた「バランス神技」に世界が衝撃を受ける! 「完全に言葉を失った」「これこそ “アート” だ!」が話題になっていました。
シダ・ミヨコさんが、スペインのテレビ番組”TU SI QUE VALES”で披露したパフォーマンスが絶賛されています。
ただ、上記サイトは上品なサイトとは言いがたいので、当サイトのお客様には、直接、テレビ局のサイトのMiyoko Shida Rigolo, 52 anos, sanddorn balance、あるいは、ご本人のあまんじゃく徒然という日本語ブログの季節のごあいさつ + 追伸から動画をご覧になることをお勧めしておきますね。
ご覧いただくとおわかりになるかもしれませんが、どこをどこに載せるかという目印は、どうやらあるようです。
だから、そういう瞬時のジャッジがスゴイ、という話ではありません。
上記ブログのゲストブックによると、パフォーマンスで使われる素材は椰子とココで、総重量は5kgくらいとのことですから、
「重い物を軽々と持ち上げて、スゴイ!」
という話でもありません。
じゃあ、どこがスゴイのか。
仮に目印があったとしても、照明が当たり、大勢の観客の視線が集中しているパフォーマンスにおいて、毎回、目印通りに合わせて、しかもその動きで観客を魅了するのは、そう簡単なことではありません。
たぶん、必要にして最小限、かつ洗練された美しい身のこなし、が必要なパフォーマンスなんだと思います。
ただ、「必要にして最小限、かつ洗練された美しい身のこなし」だけが舞台上に存在した場合、私たちシロウトには、そのどこがスゴイのか、なかなかわかりません。
退屈して、眠っちゃう人もいるかもしれません。
そこで、羽根や椰子とココといった材料を使って、スゴさを可視化した、ということではないでしょうか。
さて、私は恥ずかしながら、シダさんのことをまったく存じ上げなかったのですが、この動画を見て、
「この方は舞踊家だな、しかも、身体の軸のぶれないスゴイ舞踊家だな」
と思いました。
そして、myspaceのプロフィールを見て、納得。
コンテンポラリー、クラッシックバレエ、舞踏、能、日本舞踊、歌(ソプラノ)、舞台演劇の心得のある職業舞踊家でした。
やっぱり~
あの無駄のない、ゆっくりとした動きは、能を想起させます。
でも、能以外の舞台芸術を介しても、あの動きに到達することはできるはずです。
『たたずまいの美学――日本人の身体技法』(矢田部英正著、中公文庫、詳細は→私のオススメ・その9からどうぞ)によると、
名バレリーナ、マイヤ・プリセツカヤがテレビのインタビューで、美しさを保つ秘訣を聞かれた時、
「私は骨で立っているからです!」
と答えたそうです。
その意味を、著者は「骨格の構造に従って動作する」と解釈しています。
すなわち、
「バレエの技術でも、『骨』をとらえることができれば、無駄に筋肉やエネルギーを浪費しない合理的な動きになる」
「したがって還暦を過ぎて筋肉が衰えたとしても、『骨で立つ』ことができればまだまだ舞台に立てるのだ」(183~184ページ)
つまり、クラシックバレエを極めれば、あの無駄のない、ゆっくりとした動きができるようになる、ということではないでしょうか。
『たたずまいの美学――日本人の身体技法』でも、地唄舞いの踊り手である武原はんが、和装の時と洋装の時とで立ち方を変えているように、身体技法を(習慣ではなく)訓練で身につければ、身体をコントロールできるようになる(63~64ページ)、としています。
富士山の登山口はいくつもあるが、頂上は一緒、みたいなものですかね。
実際、このパフォーマンスをするのはシダ・ミヨコさん1人ではないようですし。
広い意味での身体表現(演劇、舞踊、歌唱、演奏)を学ばせる意味で書いた話にもつながりますが、改めて、子どもには、クラッシックバレエ、能、日本舞踊、歌、などなど身体を使う芸術を学ばせるべきだと思いました。
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