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錦織圭選手のこれまでと、これから

みなさまご承知の通り、9月8日、ニューヨークにおいて、テニスの四大大会の一つ全米オープンの男子シングルス決勝が行われ、第10シードの錦織圭選手は第14シードのマリン・チリッチ選手(クロアチア)に3─6、3─6、3─6で敗れ、準優勝となりました。
錦織選手が決勝で負けたことにがっかりしている人が多かったようですが、私はあまり気にしていません。
というより、決勝まで行ったことがスゴすぎて、いまだ消化不良、といった状態なんです。
決勝の試合内容を吟味するところまで、頭が進んでいません。
そのくらいに、錦織選手の活躍はスゴイことだと思っています。

何がどうスゴイのか?
1つ目。
ロイターのテニス=錦織は全米オープン優勝ならず、チリッチに敗れる(2014年 09月 9日 08:05 JST)が指摘しているように、
「アジア勢が四大大会の男子シングルス決勝のコートに立つのは、錦織が初めてだった」こと。
さまざまなスポーツの中で、テニスのイメージは、要は、欧米の上流階級が楽しむスポーツ、ではなかったかと思うのです。
それだけに、アジアで生まれ育った小柄な青年が、米国留学を経て、よくぞここまで、という思いがわきあがるのを否定することはできません。
しかも、準決勝で世界ランク1位で第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を下すなど、タフな試合を経て、ここまで上がってきたわけですから、アジアに限らず世界中のテニスファンの注目を集めるのも当然です。

2つ目。
全米オープン8強入りで盛り上がっていた頃、スポニチ Sponichi Annexに出たIMGアカデミー同期が語る錦織の凄さ 緊迫の場面で上がるギア[ 2014年9月3日 09:35 ]の中で、現在リコーのテニス部に所属している喜多文明さんが、錦織について、
「競った場面、緊張する場面で、それまでの内容を理解してさらに一段上のプレーができる。いちかばちかでも守りに入るのでもない。その感覚は僕には分からなかった」
と語っていて、その率直な物言いに胸を突かれました。

そしてまた、「力を入れない、脱力」は大切でご紹介した、ハーバード大学生廣津留すみれさんのお母様、廣津留真理さんの言葉、
「成功(何をもって成功と呼ぶかはそれぞれですが)するお子さんの共通点は、”緊張しない・落ち着いている”こと、イコール「力を入れない」だと思います。それが演奏のみならず、学力・人間関係にも影響するので、不思議です」
を思い出しました。
廣津留真理さんは株式会社Dirigo代表取締役で、大分市内で、英語をツールにして表現力を身につける教室を運営している方です。

さらに、4強に進出したタイミングで出た Bloombergの錦織の快挙で実った盛田氏の投資-テニス基金で留学支援の中で、盛田氏は、準々決勝のワウリンカ戦について、
「勝利の瞬間、錦織選手は非常に平常心だった」
と語っています。
緊張していなかったわけですね。

なお、あっさりと負けた決勝については、公式サイト内のブログUS OPEN(2014.09.12)で、錦織選手自身が、
「初めての決勝の舞台で緊張していたのと、体力的に使い果たしていたので試合に100%集中できていませんでした」
と振り返っています。
やはり、緊張しちゃダメなんですね。

3つ目。
もちろん、「緊張する場面で、それまでの内容を理解してさらに一段上のプレーができる」錦織選手が、例えばイチロー選手のような“選ばれた人”であることは間違いないでしょうが、そんな彼を多くの人が支えてきたこと、それを思うと泣けてきます。
朝日新聞デジタルの錦織圭、貫いた遊び心 ラリー応酬、王者振り回す編集委員・稲垣康介(2014年9月8日00時35分)によると、テニスの駆け引きの魅力を教えたのはお父さんだった模様。
お父さんいわく、
「実生活では人を欺くのは悪いことだけど、テニスはルールの中で、いかに相手の心理の逆をつき、だますかが勝負」。
そんな教え方をされたら、もうテニスに夢中になっちゃいますよね。
そして、お父さんとお母さんは、13歳の我が子を米国へと送り出す決断を下します。

その米国留学を支援したのが「盛田正明テニス・ファンド」。
朝日新聞デジタルの(ひと)盛田正明さん 錦織圭選手を育てたテニスファンドの会長によると、盛田氏は2000年、「テニスの4大大会で勝てる選手を育てたい」と、私財1億円を投じてファンドを創立したそうです。
そして、小学生だった錦織選手を発掘し、渡米してからは、レッスン料や遠征費を援助してきたそうです。
このファンドなくして錦織選手を語ることはできないでしょう。

そして、元全仏オープン王者のマイケル・チャンコーチ。
Sportivaのマイケル・チャンと松岡修造が語る、錦織圭の未来(神 仁司●取材・文 2014.05.28)で、11歳から錦織を見守ってきた松岡修造氏は、
「マイケルは、相当口うるさい。正直、圭とマイケルの性格はあまり合っていないと思う。ただ、圭には経験にもとづいた説得力のあるマイケルのアドバイスが必要。一方、ダンテのようなイージーゴーイング(楽観的なタイプ)が、圭は大好き。だからダンテもいないとダメ。ダンテとマイケル、ふたりのコーチの指導がうまくミックスできているので、最高のチームになっている気がします」
と指摘しています。
松岡氏は、錦織がグランドスラム制覇を成し遂げるためには「マイケル・チャンのメンタルが、100%注入されることが必要」とも述べています。
マイケル・チャンのメンタルって、いったい何だろうと思ったら、ポイントは「鬼軍曹」みたいです。
詳しくは、Yahoo!ニュース 個人コーナーマイケル・チャンが錦織圭に授けようとしているもの(秋山英宏 | フリーランスライター 2014年1月26日 17時13分)をどうぞ。
世界一になるって、本当に大変なことなんだなあ、と胸が詰まります。

これだけスゴイことを成し遂げた錦織選手ですが、これからも鬼軍曹のシゴキに耐えて(?)、茨の道を進んでいかねばなりません。
毎日新聞のテニス:「トップ10」定着 24歳が分岐点(2014年09月09日 22時27分(最終更新 09月10日 06時32分))で、世界ツアーを転戦した経験もある慶大の坂井利彰専任講師はデータ分析に基づき24歳の錦織が「今年はトップ10入りし、そこで定着できるかどうかの分岐点だった」と語っています。
坂井氏の分析ではトップ10入りする確率は錦織の現在の年齢である24歳から下降するそうです。
つまり、滑り込みセーフだった、ということですね。
日本経済新聞のテニス「4強時代」終わりの始まり 錦織、決勝進出(2014/9/7 21:51)で、「終わりの始まり」とされている「4強」の面々は、33歳のフェデラーを除けば、ジョコビッチ27歳、ナダル28歳、マリー27歳と、錦織とあまり変わらない年齢なんですね。
言い換えれば、錦織選手に残された時間は限られている、ということです。
それはご本人や周りの方々が一番よくわかっていることでしょう。
これからは、自分との闘いに加えて、時間との闘いも入ってくるのです。

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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