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武田双雲『しょぼん ひらがな』の凄さ

時期的に、入学予定の小学校から、
「これはできるようにしておいてください」
みたいなリストを渡され、うんざりしているママ、パパも多いのではないでしょうか。
入学準備、どうしてます?で書いたように、基本的に私は、特別な入学準備は必要ないと考えています。
身の回りのことができて、座って先生の話を聴くことができれば、それで十分ではないかと思います。
(リストが求めているのも、だいたいは、そういうことではないでしょうかねえ。)
だからと言って、子どもを、大人の望むことを黙って実行する“空気読みロボット”にするのは反対です。
自分の頭で状況を判断して、自分の意志で座って先生の話を聴く子どもに育てたいわけですが、それが意外と、奥深くて難しく、だからこそ、うちも含めてみんな悩んでいるわけですね……。

もう少し何か準備しておきたい方には、私はこの本をお勧めしています。

同書は、「読み」「書き」「計算」「聞く・話す」の4つに分けて、計31のポイントを指摘しています。
「読み」は具体的には「ひらがながだいたい読めて3文字程度の単語を読めるようにしておく」こと。
「書き」は「自分の名前をひらがなで書けて、鉛筆の使い方になれるようにしておく」。

この読み書きに関して、ぜひお勧めしたいのが、武田双雲さんの『しょぼん ひらがな』

2013年2月4日配信 ひらがなの本の話でも紹介したのですが、初めてのひらがなとの出会いは、こんなふうであってほしい、と感じる本です。
「ことばや文字は、人と人が気持ちを伝え合う、コミュニケーションのためのもの。親子でいっしょに“見て、感じて、楽しむ”新しいひらがなの提案」といううたい文句が体現された、スゴイ本だと思います。
実は、みーちゃんが字に興味を持ちだした頃(3、4歳だったかなあ)、「もとの漢字からどう変化してひらがなが生まれたのか」がヴィジュアル化されている本を探していて、たまたま書店で見つけたこの本を買いました。
「なんで、『あ』って、こういうじなの?」
という質問が来ると思ったからです。

実際にはその質問は来なかったのですが、備えあれば憂いなし!
見開きの右ページに、ひらがな1文字が楷書体で書かれていますので、
「『ち』って、みぎだっけ、ひだりだっけ?」(よく「さ」と間違える)
などと、ひらがなの書き方を尋ねてきた時には、
「このページを見なさい」
と、その美しいお手本を指させばよいのです。
お手本を鉛筆でなぞりたければなぞればよい。
なぞりたくなるのも当然です、だって美しいのですから。
書き順も記されていますので、聞かれたら、そこを指させばOK。

左ページは、右ページの字を使った言葉(書体は、言葉の意味に合わせてさまざま。「創作書」と言うのだそうです)と、それに関連した印刷文(自由詩)。
例えば、「ち」だと「ちゃんと」と、几帳面な雰囲気の書体で書かれ、その下に印刷された文字で、

「くつを そろえた?
どあを しめた?
てを あらった?
はを みがいた?」

子ども目線が、いいでしょう?
「く」は「くやしい」で、なんというか、書体に悔しさがあふれています。
印刷文は、

「まけた
できなかった
(1行アキ)
つぎこそは」

子どもがつまずきがちな、小さい「ゃ」「ゅ」「ょ」のページや、「わ」と同じ音で読む「は」と「え」と同じ音で読む「へ」のページも設けられています。
ひらがなの一覧表に「いろはにほへと」のいろは歌、ひらがなの歴史、先ほど言及した「もとの漢字からどう変化してひらがなが生まれたのか」と、ひらがなについてのすべてが網羅されている感じです。

さらに、さすがは書家書道家の書本。
ツボを押さえた「書き」情報が詰まっています。
そろえたい道具やその説明、選び方、筆のもち方、かまえ方、筆の動かし方のお手本まで。

まずは、遊びの延長で、こちらを使ってやってみたらいかがでしょうか?
水で書くので、まわりが汚れません。

子どもがノッてきたら、こちらのような書道の道具を用意してあげましょう。

もちろん、鉛筆と筆は違いますけど、日本に住んでいるなら、ちゃんと筆くらい使えるようになりたいですよね。

そうそう、最近は赤ちゃん向けのひらがなの本がいっぱい並んでいますよね。
実はうちもプレゼントされましたが、正直に言って、
「なに、これ」
と思いました。
右ページにひらがなで物の名前が書かれ、左ページにその物の絵が描かれているのですが、赤ん坊には物の名称なんてまだわからないだろう、誰が何のためにこんな本を作るんだろう、と、心の底から不思議に思ったのです。
もし親子の関わりを促進するためだとしたら、物語を読んであげるとか、もっといい関わり方があるような気がします。
とにかく、単なる名詞列挙は、私にとって、まったく意味不明でした。
それが惹句によると、「20年以上も愛され続けている、ひらがなの本」で「85万人を超す子どもたちに読み継がれてきたロングセラー」らしく……頭を抱えました。
この国の乳幼児教育、いったいどうなってるんだって、びっくりしましたよ。

まず、私は、生後数か月くらいでひらがなを教える必要があるとは思いません。
ただ、ひらがなって、親子がかかわるツールとして、いいとは思うんです。
生後3か月くらいの頃、みーちゃんの目の前で大げさに口を開いて、
「ア、イ、ウ、エ、オ」
とやったら、オオウケでした。
そんな感じで、ひらがなの本を使うのがいいんじゃないかと思っています。
親が楽しんで読みながら声を出してあげる、子どもは楽しそうな親の顔を見て喜ぶ、少し大きくなってきたら、親の視線の先(開かれたページ)を追いかける、というようなイメージです。
ということは、親が見て楽しい本がよいわけです。

その点、安野光雅先生の『あいうえおの本』はとっても綺麗で、大人が見て楽しめるえほんです。
しかも、5歳とか、ひらがなを読めるようになったら、自分1人で楽しく読めるので、とてもコストパフォーマンスがいいです。

そしてもちろん、武田双雲さんの『しょぼん ひらがな』も、大人が読んで楽しめ、小学生の書のお手本にもなりますから、元をとれること請け合いです。
ちなみに、『しょぼん ひらがな』のアートディレクションは佐藤可士和さん。
お、今、食指が動いたパパ、ママ、いたね!

【追記】2014.9.8
補足エントリそれでも武田双雲『しょぼん ひらがな』を勧める理由を書きました。
あわせてお読みいただければ幸いです。

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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