読売新聞の絵本やパズルはアプリで…子守はスマホまかせ(2013年11月16日16時35分)という記事によると、来月から、日本小児科医会が、スマートフォンの利用を控えるよう保護者に対し啓発活動を行うそうです。
びっくりしながら記事を読み進みますと、
「子供がぐずるとスマホを与えて静かにさせる親がよくいるが……」
ここでドキッとしたのは、私だけではないはず。
子どもを、電車やレストランといった公共の場所で静かにじっとさせることは、すべての親にとっての永遠の課題ではないでしょうか。
そして、折り紙や絵本を持参していないとき、スマホがその課題を相当程度解決してくれていることもまた、おそらく多くの親御さんは実感していることと思います。
それなのに!
子どもがぐずったとき、一切スマホにさわらせてはいけないというのでしょうか。
私は、そんなはずはないと思います。
結論から言うと、日本小児科医会が啓発したいと考えている相手は、子どもにスマホを渡しっぱなしの親です。
このサイトを度々訪問してくださっているようなママ、パパは、含まれていません。
だから、どうぞ安心して、お子さんをスマホで遊ばせてあげてください。
どうして小児科医でもない私がそんなふうに断言できるか、不審に思われた方もいるかもしれませんね。
その理由は、育児雑誌の取材などを通じて、世の中にはいろいろな親がいる、ということを知っていて、かつ、一部の親へのメッセージが全体へのメッセージとして発信されている例を見ているからです。
今「いろいろな親」と書きまして、「いろいろ」は「いろいろ」なので具体的に書くのは難しいのですが、極端かつ不運な例を挙げるならば、時折、報道される子どもの虐待死や、親の過干渉などが遠因になったと思われる少年事件です。
だから、子どもに対して物理的な虐待や精神的な虐待(過干渉を含む)、ネグレクトなどを恒常的にしているわけではなく(一時的にカッとしたりムッとしたりは、ちゃんと親としての仕事をしていれば誰にでも経験はあるでしょうから、それは除く趣旨です)、真摯に子育てに取り組み、子どもの将来を憂えている親御さんは、私に言わせれば、啓発される必要はないのです。
それどころか、子どもの将来を真剣に考えた場合、スマホやタブレットにさわらせない、という選択は“ありえない”です。
コミュニケーション力(論理的表現力)をどう鍛えるかでも紹介した、EBOOK2.0 Magazineの「米国のライティング教育はデジタルで進化する」が言うように、
「このままではデジタル・ツールを有効に利用した米国と、それに振り回される日本の差はますます拡大していく」
おそれは大、なわけで、仮に学校が期待できないのだとしたら、もう家庭で(単なるプログラミング教育にとどまらない)デジタル教育をするしかないのです。
この辺りのエントリも準備中ですが、一例を挙げるならば、今の乳幼児が大学に通う頃には、大学にわざわざ通わなくてもMOOC(公開オンライン講座)で十分、MOOCのほうが効率よく深く学べて、就職にも有利、という世の中になっているかもしれません。
つまり、この10年くらいで、中世から連綿と続く教育制度のパラダイムが、ひょっとしたら変わるかもしれない、ということです。
それなら“保険”も兼ねて、今からMOOCに親しませておきたい――真剣に子どもの将来を考えている親であれば、そう思うのではないでしょうか。
しかも、MOOCは楽しい!
例えば、こちらは、MOOCの一つカーン・アカデミーの中で算数の入り口にあたる動画ですが、近所の勉強の得意な外国人のお兄さんに教えてもらっている感覚で、楽しく勉強できそうですよね。
ただ、スマホやタブレットを利用したデジタル教育はまだ始まったばかり。
メリットもデメリットも、よくわかっていません。
なので、「子どもにスマホを渡しっぱなし」にならないように、スマホで遊ぶ際は、親が注意を払う必要があると考えます。
いくつかポイントを挙げてみます。
1 親や大人が子どもと一緒に遊ぶか、ときどき様子を見ながら「そう、楽しいのね」「面白い音だね。何の音かな」と反応したり(乳児の場合)、「何を見ているの?」「どういう話なの?」「どこが面白いの?」といった質問をしたり(幼児の場合)する。
質問は終了後でもよいし、子どもの年齢や集中の度合いによっては、終了後のほうが望ましい場合もある。
2 乳児であればガラガラ(ラトル)、幼児であればフタ付きの空きビンなど、手を使う道具で遊ぶ時間も作る。
3 1で見聞きした物の実物を、できるだけ見せたり聞かせたりする。
特に匂いや手ざわり、味はスマホではわからないので、実体験をさせるよう心掛ける。
冒頭でふれた読売新聞の記事の中で挙げられている、スマホを控えるべき理由、「親が子供の反応を見ながらあやす心の交流が減ってしまう」点と「画面をなぞるだけの仮想体験を重ねることが、手の機能や五感を育むことに影響を与えかねない」点に沿って、挙げてみました。
いかがでしょうか。
なお、2に関してですが、生後88日 うつ伏せの問題点あるいはあおむけのメリットでふれたように、手を自由に動かせるということはヒトにとって重要だと思います。
ただ、指先の器用さは、個人的にはそれほど重視していないです。
2012年12月10日配信 書籍紹介『赤ちゃんの脳を育む本』で書いたのですが、私の理解では、乳幼児の脳科学には、「猿派(指先派)」と「読み書き計算」派があります。
「猿派(指先派)」の代表は京都大学名誉教授の久保田競先生。
脳科学おばあちゃんの久保田カヨ子さんの旦那様です。
「読み書き計算」派の代表は、脳トレの川島隆太先生。
私には、「猿派(指先派)」は猿研究をそのまま機械的に人間の赤ちゃんにあてはめていて、だから指の動きを重視しているように思えるのです。
もちろん、指が動かせることは大切ですが、特訓してまで、指だけ器用に動かせるように鍛えあげる必要はないと思っているので、付け加えておきます(「手」と聞くとこちらを思い浮かべる人もいると思うので)。
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