この日は助産院で妊婦健診。
胎児の位置が高いみたいです。
「ねえ、セックスしてくれないかなあ」
へ?
院長先生、今なんておっしゃいました?
なんて言いたいのをこらえて、言葉を探す。
だって37歳ですもの。
世間様から見たら、もう立派なオトナですもの。
動揺を抑え、出てきた言葉が、
「コンドームはするんですか?」
「付けたら、する意味がなくなるじゃないの。馬っ鹿じゃない」
たしかにそうだ。
なんと的を射た指摘だろうか(ひどい言い方、と感じるプレママさんもいるかもしれませんが、このくらいでかあさまは傷つきませんし、このくらい言い合える信頼関係があったのです)。
そう、お産を早める方法としては、階段の上り下りや散歩、スクワットが有名ですが、それでもダメなときは、ナニをいたしましょう。
これは、昔から言われていることです。
“おばあちゃんの知恵”みたいなものですね。
一応、科学的な説明をすると、精液にはプロスタグランディンという物質が多く含まれていて、これには子宮を収縮させる働きがあります。
プロスタグランディンは現に陣痛促進剤として使われているくらいで、したがいまして、性行為でお産を早めるというのは至極合理的な発想なわけです。
でも、病院ではまず、
「セックスして」
とは言われませんよね~
さすが、助産院。
薬を使わず、自然の営みを利用するんですね。
で、実践したかどうか。
気になりますよね?
その日、帰宅して、とうさまに、院長先生から言われたことを伝えたところ、
「心の準備が……」
「準備して、するようなことでもないでしょ」
「いや、だって、働き蜂みたいじゃないか」
「別に行為の後、あなたを食べやしない」
「いやあ、食べるようなもんだ」
というやりとりの末、週末に決行することになりましたが、決行予定日に破水、入院(詳細は後日)。
残念ながら“おばあちゃんの知恵”の効果のほどを確かめることはできませんでした。