2015年08月

週刊ダイヤモンド2015年8月22日号「息子・娘を入れたい学校2015」の読み方

「息子・娘を入れたい学校2015」という特集が読みたくて、生まれて初めて自分のお金で週刊ダイヤモンドを買いました。
2015年8月22日号です。

編集部は、6月から7月初旬にかけて、首都圏と関西圏の8都府県の約480の中高一貫校にアンケートを実施し、回答のあった304校を対象に「学校選びランキング2015」を作成したそうです。
偏差値や合格実績を用いないランキング、とのことですが、そういうランキングがこれだけ大がかりに作成されたのは、たぶん初めてのことじゃないかと思います。
どういう項目について、どういう配点でランク付けをしているのか、気になりました。
また、ダイヤモンド・オンラインの「今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ」下村博文・文科相に聞く 「偏差値一辺倒の価値観を大学入試から変えていく」の最後のほうで、副編集長が、
「2003~06年に4度にわたり、「息子・娘を入れたい学校」という、今週号と同タイトルの特集を組みました」
「時代は多様化に進むべきはずなのに、大学進学実績とそれをベースにした人気指標としての偏差値が、学校選びの絶対的なモノサシとして存在感を増していったというのは、皮肉な成り行きでした。残念ながら、本誌の学校特集もそうした流れに抗えず、コンセプトを変えていったという反省すべき経緯があります」
と述べているところも、心に響きました。

せっかくなので、ひととおりレビューしていきましょうかね。

「藤原和博さん これからの子供に求められる力って何ですか?」
この特集の意義付けをする部分。
本でいえば、まえがきのような部分ですね。
教育が変わらなければならない理由とその変わり方をわかりやすく説明しています。
いろんな話を詰め込んだ総花的な記事となっていますが、そのくらい、今の変化はあらゆるところに影響が及ぶ大変化だってことですね。
要点は、当サイトゴリラは人間のライバルになりうるか――国立大学人文社会系の問題についての表現でいえば、
「多数の均一化されたエリートが必要な時代ではなくなったわけです。
1人でいいから、ずば抜けた子がいればいい、そういう時代なんですね」
ということだと思います。

そして、いよいよ本編へ。
4つのパートから成り、まず 常識一変! 明治以来の大教育改革が進行中」

「2020年度の大学入試は「知識偏重」から「人物重視」へ」
進みつつある大学入試改革、大学改革について整理した記事。
ニュースなどでみなさんご存じのところかと思いますが、当サイトでいえば、
「多面的に評価」って何?
「G型・L型大学」の議論に興味を持てない理由
「学歴の値段」を観ましたか?
あたりでさんざん眺めてきた話です。

「[Interview] 南風原朝和●東京大学理事・副学長 来年から実施の推薦入試では“突き抜けた”才能を採りたい」
当サイト東大の推薦入試はローザンヌ国際バレエコンクールだの方向性は間違っていなかったなあ、と改めて思いました。

「[Interview] 下村博文●文部科学大臣、教育再生担当大臣 偏差値一辺倒の価値観を大学入試から変えていく」
大半は前掲「今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ」で読めます。
内容的には当サイト地元の公立小中で大丈夫と重なります。
大臣の、
「今私が言っているのは、20年先の日本を考えたときに今から準備すべき教育改革の話。ところが、ほとんどの親は自分の受けてきた教育を例に出して、同じものをわが子に伝えたいという。いわば20年前の話をしている」
という言葉は、実感としてよくわかります。
自分が受けた教育を、吟味することなく、そっくりそのまま子どもに与えようとしている人が多過ぎるという気が私もしています。

そういう、内容的にいかがなものか、という疑問以外というか、それ以前の問題として、先立つものが……。
「春の海」の宮城道雄とブルー・オーシャン戦略とこれからの子育てで書いたように、「これからは、子どもに、自分が受けたのと同等のものを与えられない時代になっていきます」。
みなさん、腹をくくれていますか?

「「東大は人生の幅を狭める」と訴えた“元フリーター”の今
[Interview] 出雲 充●ユーグレナ社長 時間を忘れ何かに没頭する そんな力を大切にしたい」

これは、上で紹介したように、継続的に同じ特集をしていたから拾えた、極上のネタですね。
2004年の特集で「フリーター」として登場していた出雲充さんが、今や「日本のベンチャーの星」。
できすぎです。
これが特集の冒頭に来たほうが、この特集の意味合いがはっきりしたような気がしますけどね……そこまでやると、読者がついてこられないと思ったのかな……。
この11年、出雲さんが何をしていたか、については、HRナビの「創業から2年半、ずっと月給10万円だった」ミドリムシを売る社長が諦めなかった理由を、ぜひどうぞ。

「人物重視の「新テスト」に向け先行する学校、模索する学校」
武蔵の梶取校長、桐朋女子の河原校長、自由学園の矢野学園長へのインタビュー。
親としては、このあたりの、どういう試験になるか、が、もっと知りたかったかな。
なお、武蔵については、武蔵の復権?で、勝手にエールを送っています。

「[Interview] 中室牧子●慶應義塾大学総合政策学部准教授 データで教育を語らない日本 教育界の悪弊がブームを生む」
大改革や「グローバル」ブームに浮かれないように、足元を見つめなおす、スパイス的な記事。

気分を変えて、 英語、キャリア教育 模索する学校の現場」へ。

「機械が奪う300兆円市場 激変する職業と教育の現場」
ダイヤモンド・オンラインの機械に奪われそうな仕事ランキング1~50位! 会計士も危ない!激変する職業と教育の現場と同じです。
当サイトでいえば、
地元の公立小中で大丈夫
いよいよ来るぞ、学習の個別化――スマイルゼミの場合
「学歴の値段」を観ましたか?
あたりで触れた話です。

「[Column] 2週間でやる気に火を付ける次世代リーダー養成塾の威力」
日本の次世代リーダー養成塾のレポート。
塾長は経団連の会長さんですからね、おそらく日本のトップの風景が見られると思います。
「われこそは」という高校生は応募してみてもいいんじゃないかな、と思います(ちょっと違うな、こんなもんか、などと感じる子もいるかもしれませんが、そう感じるかどうかは、実際に感じるまではわからないので)。

「平均年収1016万円、2168人が回答 ビジネスマンが選ぶ学校」
この特集の中での位置づけがよくわからない記事。
「やっぱり、英語だよね。だよね~」的な?

「迷いとリスク背負い試行錯誤 英語&国際教育の「三つの力」」
7校の取り組みを紹介。

「[Column] 意外に旗色悪いIBとSGH カネと評価を前に悩む学校」
学校も大変だなあ、という記事。

「[Interview] 石井てる美●お笑い芸人 白百合→東大→マッキンゼー そこから芸人に転じた理由」
この方、存じ上げませんでした。
面白いのかな?
動画、探してみようっと。

やっと、目的の 脱・偏差値&合格実績 新学校選びランキング」に到達。
母校が上位に来ていて、びっくりしました(それがこのエントリを書きはじめた理由です)。
「英語教育力」に12点、「キャリア教育力」10点、「財務の健全性」4点、「運営の安定度」4点、という配点に基づくランキング。
母校含めて、「英語教育力」の得点の多い学校が上位に入っています。
そこで、なんで母校がこんな上位なのか、という観点から「英語教育力」の中身を見ると、ネーティブスピーカーの教員数という項目が目にとまりました。
母校は宣教師がはじめた学校なので、外国人宣教師の先生が常時いて、英語の授業の半分くらいを受け持っていました。
案の定、上位には、宣教師や修道士、修道女のいるミッション・スクールが多いです。
あと、中学の英語の授業で検定外教科書を利用していると、2点が与えられるという配点も効いているように思いました。
母校では、普通の教科書以外に、全部英語の本(要は洋書)が当然のように使われていました。
検定外教科書というのは、たぶん、それのことでしょうね。
母校のようなタイプの学校に有利な項目・配点だなあ、と思いました。

「首都圏・近畿圏 私立高校法人204校対象 知られざる学校の財務力」
これはなかなか面白いランキングですが、私の能力を超えるので、どなたかが分析記事をアップしてくださるのをお待ちしています。

「親が知らない今の人気校」
これも面白いんですが、注記されているとおりの問題点があり、読み方が難しいです。
タイトルどおりに、意外な学校の名前を発見して、先入観や偏見をとっぱらう、といったスタンスでいいのかなあ、と思います。

そして、最終パート 独自調査で判明! 校風と求める生徒像」へ。
正直言って、学校に「学校の教育を通じて育てたい生徒像」を聞いても、ありがちなキーワードが出てくるだけですから、面白くはないです。
とくに宗教系の学校はそういう文言が入ってきますし。
数か所に差し込まれている教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏のコメントを補助線にすると、違いが見えてくる、というか、お子さんとの相性が見えてくるように思いました。

とくに面白かったのは、73ページの「おおたとしまさの目」。
名門校に共通する特徴として「反骨精神」を挙げています。
この点については、私自身もママ日記のメルマガで熱く語っているくらいでして、全面的に同意します。
偏差値や合格実績で同程度であったとしても、国公立と私立では、身につくものがまったく違うんですよね。

私は「地元の公立小中で大丈夫」というエントリを書いていますが、それは私立受験をあおるような記事が嫌いだから書いただけでして、決して私立の学校は嫌いじゃありません。
というか、上でカミングアウトしたように、自分自身、高校までは私立です(ちなみに、幼稚園からです)。

というわけで、次は「私立、いいじゃん」というエントリを書こうと思います。

【追記】2015.8.24
書きました。
自立を尊び、妊娠について教える私学はいいね!

東大推薦入試の記事に関連して、「“突き抜けた”才能」の例を挙げておきます。
たまたま見かけただけで、他にもスゴイ若者はいるはずです。
また、あくまでも私の理解に基づく例ですが、異論はないんじゃないかなあ~と思います。

筑波大学アドミッションセンターのAC入試リーフレット 平成26年度版に登場するお2人。

まず、武蔵高校出身の辻本さん。
高校1年のとき、高校の旅費支援制度を利用してレポートを書き、2年時に書いた論文は高校の表彰制度で、文系で20年ぶりに表彰されたそうです。
大学の先生から、そうした研究は「歴史地理学」にあたる、と聞き、歴史地理学を専門的に学べる2つの大学のうちの1つである筑波大学を志望したとのこと。

都立上水高校出身の山口さんは、中学生の頃からチョウが大好きで、高校生のときにレポートを日本鱗翅学会で発表したほど。
筑波大学を志望したのは、見学にきたとき、東京ではなかなか見られない美しいチョウが生息していると知ったから。
AC入試の面接では、思う存分チョウについて語れて満足感でいっぱいだったそうですよ。

お2人くらいのレベルで「東大に行きたい!」と考える人がいればいいですね!

それから、登大遊さん。
筑波大学基金の「FUTURESHIP CREWS’ MESSAGE」の登 大遊様【ソフトイーサ株式会社代表取締役、CYBERDYNE株式会社顧問】を読むと、天才ってこういう人のことを言うんだろうなあ、という思いがジワジワと広がります。
ジェイン・ボウルズの『ふたりの真面目な女性』を読んだときにも、そんな感覚がありました。
「私は~しなければならないと思った」というくだりに、何回「なんでやねん!」と突っ込んだことか……。
登さんは、さらにスケールが大きくて、なんというか、パラレルワールドの話を聞いている感じです。

リンク先を読んで、登さんがただふざけているだけじゃないか、と考える人もいると思いますので、そうじゃないとわかっていただくために、「shi3zの長文日記」の今年の未踏は面白かったから引用しておきます。

「これによって僕はインターネット以前の当時としては異常な注目を浴びた。けれどもそれが結果的に、僕という人間が多少の炎上では動じない人間に育ててくれた。
これは登大遊さんも同じで、彼が中学生の頃、僕は工学社の雑誌で彼の記事を見ていた。
彼は最初から有名だったので、未踏で天才プログラマーに認定されてもおかしな方向にはいかなかった。
そして仮に彼らが注目を浴びることがあったとしても、それは実力相応だ。
だから僕は帰り際、彼らにこう言った。
「謙遜はやめろ」」

保護中: 2015年8月17日配信 現在進行形のママ日記(8歳0か月) 「なにをかけばいいの?」

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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