生後43日 その3 生理的早産と鬼のような母親

助産院と治療院で言われたことのメモ、続きです。
「人間は生理的早産。
本来、人間の赤ちゃんは歩けるようになるまで、つまり1歳と3か月くらいまで、お母さんのお腹の中にいるはず。
だからお母さんは、赤ちゃんがせめて立つまでは、仕事をしないで赤ちゃんと一緒にいてほしい」

多少表現は違うかもしれませんが、そういう趣旨のことを治療院で言われました。

「生理的早産」というのは、スイスの生物学者・思想家のポルトマンという人の言葉で、「1年もの早産」「生理的早産」のページの説明がわかりやすいと思います。
やや専門的になりますが、「A.ポルトマンの『生理的早産』と二次的離巣性を示すヒトの性格形成・能力発達の可塑性(変化可能性)」も“なるほど”でした。

私なりの理解になりますが、

人間の心と頭の成長においては、お母さんのお腹の中ではなく、産まれ出た後の外界との接触の中で達成する部分が、圧倒的に大きい。
したがって、乳児が順調に成長するためには、親や周囲の大人が積極的にかかわる必要がある。

ということなのかなあ、と思っています。
とすれば、「生理的早産」という考え方に異議を唱えるつもりはない、というより、まったくその通りだと思います。

ただね、治療院の先生のように、
「赤ちゃんがせめて立つまでは、仕事をしないで赤ちゃんと一緒にいてほしい」
と言われても……。
赤ちゃんに大人が寄り添って、愛情を注ぐ必要はあるとは思いますが、その大人が母でなければならない、とは私は思いません。
母であることより、愛情豊かであること、とか、乳児についての知識があること経験豊かであること、のほうが重要なんじゃないでしょうか?
経済的にも精神的にも余裕なく、追い詰められた状態の母親がたった一人で赤ちゃんと向き合うくらいなら、一日のうち数時間、赤ちゃんを愛情も知識も経験も豊かな専門家(保育士など)にゆだねて、母親は仕事に励んだほうがいいと、私は思います。

こういうことを言うと、
「赤ちゃんって、かわいいよ~。一日見ていても、飽きないわ」
「じゃあ、なんで子どもを産んだの?」
「鬼のような母親ね」
などと言われるかもしれません。

たしかに、赤ちゃんはかわいいです。
この頃になると、何と言うか、うまく言えないんですが、“モデルのような笑い”をするんです。
作り笑いというほどではないのですが、ポーズのような笑い、というか。
それから、見ているこちらが笑うと、笑い返すことも。
指しゃぶりもします。
でも、一日ずっと見ていたら、飽きます。

ひょっとしたら先生は、私のことを、
「第一子だから経験はないけれど、愛情豊かで勉強熱心な母親だわ」
と見込んで、そう言ってくれたのかもしれません(自分で書きながら、むずがゆいのですけど)。
仮にそうだとしても、子育ての全責任を一人で負うのは、相当タフな仕事です(父親があまりあてにならない、日本の現実を前提に書いています)。
当時の自分を振り返ってみて、とても先生の期待に応えられたとは思えません。

やっぱり私は、
「専門家や家族・親族、地域の人の手や眼を借りながら育児するのが、赤ちゃんの健やかな成長につながる」
という立場です。

みーちゃんとお散歩をしていると、中高年の女性に必ずと言っていいほど、声をかけられました。

「あら、かわいいわね。何か月?」
「1か月半です」
「じゃあ、パパとママは眠いわね」

なんということもない、ありふれた会話ですが、そんな、名前も知らない方とのやり取りをはじめとする周囲の手と眼のおかげで、つらい時期を乗り切ることができた――私はそう確信しています。

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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