この日は健診でした。
「順調ですよ」
と言われ、ニコニコ笑顔で近所の眼科へ。
まぶたがちょっと腫れて痛かったので、ものもらいかな、と思ったんです。
初めて行く眼科だったんですが、受付をして呼ばれると、まず検査。
片目ずつ隠して、マルの上下左右のどこが切れているかを言う、定番の検査からはじまり、どっちがはっきり見えるか、というような初体験のものまで、ざっと20分。
ものすごく目が疲れました。
妊婦はあまり目を酷使してはいけない、と言われているんですけどねえ。
メガネやコンタクトレンズを作ろうとしている患者だったら必要な検査かもしれませんけど、残念ながら、かあさまは裸眼で1.5あります。
メガネにもコンタクトレンズにも縁がありません。
そんな目のいい人の、たかがものもらいに、ここまでやるか?
目の痛みも強くなったぞ。
でも、みーちゃんたーちゃんが順調に育っていると知ってご機嫌なかあさまは、おとなしく検査を受けました。
そしてようやく診察です。
案の定ものもらいだったのですが、薬でもめました。
かあさまが、妊娠していると告げると、
「次の健診はいつですか?」
今日終わったばかりで次はずいぶん先になる、と言ったら、
「○○という薬を投薬していいか、聞いてきてください」
それだけのためにまた1時間、2時間も待つのかと思うと、うんざりです。
「今、電話で確認できませんか?」
と言うと、
「どうぞ」
薬の名前も初めて聞く名前で覚えられないし、プロ同士で話してよ、と思って、
「先生のほうでご確認いただけませんか?」
と言ったら、できない、とのこと。
〈はは~ん、何かあったらコワイから、自分経由を避けているのね〉
と思い、待合室に戻り、はじっこに移動して携帯で電話しようとした、そのとき。
「電話は外でしてください!」
受付から鋭い声が。
寒空に妊婦をほっぽり出すか?
まあ、あとで冷静になってみれば、医療機器への影響を考えて言ったんだと思いますが、そのときは、
〈敷地内で電話もさせないほど、妊婦と関わりたくないのか? そこまで妊婦を嫌うか!〉
と一瞬、怒りを覚えました。
受付嬢をにらみつけ、黙って外へ出ます。
メモった薬の名前を、電話に出た看護士に伝えると、医師に確認してくれました。
問題ない、とのこと。
念のため、看護士と医師の名前を聞いて、電話を切り、診察室へ戻ります。
「問題ないそうです」
と言って、本日の診察はおしまい。
その日に出された薬は飲み薬と目薬だったのですが、飲み薬のほうは結局飲みませんでした。
いくら手間をかけてもらった薬とはいえ、いくら医師が大丈夫と言ったとはいえ、できるだけ薬は飲まずにいたいと思ったからです。
だからでしょう、完全に腫れがひくまで、3か月くらいかかりました。
眼科の医師は、40代の女性でした。
出産にからむ医療事故のニュースが増えていますし、彼女の対応は医師として普通のものだったのかもしれません。
かあさまがその医師の立場に置かれたら、と想像してみても、たぶん同じように対応したと思います(もう少し〈やってあげたいけど、できないのよ〉というニュアンスは出すと思いますが)。
〈同性なんだから、わかってよ〉
という思いは、甘えなんでしょうね。
それでもやっぱり、
〈そこまで妊婦を嫌うか!〉
と言いたくなってしまいます。
なんだか、世界中が敵にまわったような気がしました。
〈みーちゃんたーちゃんを守るのは、私1人しかいないんだ〉
悲壮な思いで帰宅の途につきました。