2015年08月

保護中: 2015年8月29日配信 現在進行形のママ日記(8歳0か月) キッザニア、スゴイ

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自立を尊び、妊娠について教える私学はいいね!

週刊ダイヤモンド2015年8月22日号「息子・娘を入れたい学校2015」の読み方で予告したように、「私立、いいじゃん」という趣旨のエントリを書きます。

上のエントリでも書きましたが、私は地元の公立小中で大丈夫というエントリを書いています。
しかも、現在、みーちゃんは公立の小学校にかよっています。
まるで私学を否定しているかのようですが、そうではありません。
そのエントリは、単に、私立受験をあおるような記事を見かけて、「そんなことないよ、私立じゃなくても大丈夫だよ」と言いたかったから書いただけです。
というか、実は私は、幼稚園から高校まで私立にかよっていました。
私立のいいところも悪いところも知ったうえで、私立ってやっぱりいいなあ、と思うところがあるので、それをシェアします。

まず、1つめ。
前掲の週刊ダイヤモンド73ページの「おおたとしまさの目」で、教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏が、名門校に共通する特徴として「反骨精神」を挙げています。

2013年NHK大河ドラマの「八重の桜」を観ていた方がいたら、ぜひ思い出してほしいのですが、八重の2人めの夫、新島襄は、同志社大学の設立に奔走しました。
なぜ、東大のようにすでにある国立(官立)の大学を充実させようと考えるのではなく、別の大学をつくろう、となるのか。
それは要するに「反骨精神」です。
官僚養成学校の東大だけではだめだ、もっと自立した人間を育てなければ、という思いでした。
つまり、多数の均一化されたエリートが必要な時代に、均一化されたエリートである官僚が、多数の均一化された国民を、同じ方向を向かせて一気に突っ走らせる――そういう時代に必要だったのが官立学校でした。
このように官立の学校は、国民を管理する側に立っています。

ところが、私学は違います。
国家による管理を、むしろ嫌います。
母校在学中、卒業生でもある先生(女性)が、
「我が校は、太平洋戦争の前、国からキリスト教を捨てるように言われたが、頑として捨てなかった」
という話を誇らしげにしていた記憶があります。
そういう、管理を嫌う姿勢、自立を尊ぶ姿勢は、私学ならではのものだと思います。

そして、今は、ゴリラは人間のライバルになりうるか――国立大学人文社会系の問題についてで書いたように、「多数の均一化されたエリートが必要な時代」ではなく、「1人でいいから、ずば抜けた子がいればいい」という時代です。
そういう時代に合っているのは、国民を管理することに長けている官立でしょうか、それとも、管理を嫌う私立でしょうか。
ざっくりとした話にはなりますが、どちらかと問われれば、それはもちろん、私立ですよね。
そんなふうに考えてくると、これからは「私立、いいじゃん」と言えそうです。

2つめは、教育内容について。
ダイヤモンド・オンラインの政府の「女性活躍推進」が「少子化推進」となってしまう理由(上)で、天野馨南子・ニッセイ基礎研究所研究員が「出産を失敗しても、年齢ではなく自分の体の機能のせいだと思っていた」と言い、それを「日本人全体の、日本の文化にある問題」としている点に、猛烈に違和感がありました。
しかし、私の観測範囲では、天野さんに対して賛同の嵐が湧き起こっていたのです、とくに高学歴女性から。
びっくりしました。
中卒、高卒の人だったらまだしも、(東京大学を含む)超有名な大学を出ている人が、女性の生殖能力は20歳代後半から低下し始め、36歳を境に急低下するということを知らないまま大人になっているのですから。

もちろん、記事の中で紹介されているように、
「2010年開催の「欧州ヒト生殖学会」で発表された調査結果があります。英国のカーディフ大学が1万人超のカップルに対して行った大規模な国際調査ですが、「36歳を境として女性の妊娠力は低下するか?」(正解はYES)という質問に対し、英国やカナダでは正解率が7~8割を超えるのに対し、日本では3割を切っています」
とのこと。
「日本人全体」として見て、「妊産期問題」について知らない人が多いということなんでしょうね。

そのとき、私が思ったのは、多くの日本人の勉強内容、あるいは教育内容のバランスが悪いんじゃないか、ということでした。
だって、質的にも量的にも十分すぎるほど勉強しているはずの人たちが、大事なことを知らないという事実、そして、知らないことを「自分の不勉強のせい」だと考えないで、世の中のせいにして、「日本の文化にある問題」とまで言い切ってしまっているわけです。
「妊産期問題」について知っている確率は、学歴が高いほど、知識量が多いほど、高い、というわけじゃないんだな、全体的に知識のバランスが悪いんだな、と思いました。

なんでこんな偉そうな言い方をしているかというと、私自身は知っていたんですよ、中学か、少なくとも、高校生のときには知っていました。
ただ知っていただけではなく、その知識から論理的に考えまして、
「大学生のうちに出産して、子育てしながら働くのがいいはずだ、そうすれば、体力のある20代のうちに育児ができて、仕事で責任ある立場になる頃には子どもに手がかからなくなっている」
という人生計画を立てたのですが、周囲は世間体から反対し、当時の彼氏は逃げ出しました……切ない思い出です(笑)。

それは余談として、自分がなぜ妊産期問題について知っていたのか、を考えると、時期ははっきりしないものの、おそらく中学高校の授業じゃないか、という気がしています。
なぜそう思うかというと、今考えると、母校の性教育がとても充実していたからです。

例えば、高3のときは東大の保健学科の院生が授業をしてくれたのですが(さらさらロングヘアの女性でした。卒業式以来ですけど、お元気かなあ~)、忘れもしません、定期試験で「コンドームはいつからつけますか?」という問題に度肝を抜かれ、アワアワしながら「途中から」と書いたら、「最初から(ハートマーク)」と赤字を入れて返却してくれました。

そもそも、小学高学年のとき、講堂に集められて、資料映画を見せられて、その中の図で初めて、赤ちゃんがどうやってできるか、つまり「吾が身の成り余れる処を以ちて、汝が身の成り合はざる処に刺し塞ぎて、国土を生み成さむ」(古事記のイザナギ、イザナミの国づくり神話より。ピンと来ない方は、「日本語と日本文化」というサイトの古事記における性的表現(日本神話のセクソロジー)をどうぞ)について知りました。

それから、高3の最後の聖書の授業だったと思いますが、人工妊娠中絶についてのドキュメンタリー番組を見せられました。
中絶は人殺しだ、という印象を抱かざるをえないような、かなりエグい映像だったように記憶しています。
こんなの高校生に見せなくても、と思いましたが、宗教的、倫理的なテーマとしても重要だから見せている、ということは理解できました。
番組が終わると、先生(女性。牧師でもある)は、「困ったことがあったら、相談にいらっしゃい」と言いました。
卒業後数年して、風のたよりで、ある同級生が妻子ある男性と恋に落ちて、未婚の母になった、みたいな話を聞いたので、先生のいう「困ったこと」はこういうケースを指していたのかな、と思いました。
それとは別の機会でしたが、その先生は、ご自分が、赤ちゃんがほしかったのになかなか授からなかったことも話してくださいました。

そんな調子ですからね、妊産期についても当然、学校で教えてもらっているだろうと思うわけです。

もちろん、すべての私立学校でこういうディープな性教育をしているとは思えませんし(例えば、受験に熱心な学校は保健の授業をギリギリ限界まで削っていそうだし、男子校はおそらく手薄ですよね)、母校で今もこういう授業が行なわれているかどうかについては確認していません。
当時は、「ポップティーン」「エルティーン」「ギャルズライフ」といった過激なティーン向け雑誌全盛期で、1984年に衆議院予算委員会で大問題になったくらいだったんですよね(詳細は、くだん書房の「神保町裏通り日記」2011年11月の11月19日をどうぞ)。
したがって、学校ではなく、そういった雑誌で先に仕入れた知識である可能性も排除できませんし、逆に、そういった時代背景から、学校でこそ正しい知識を教えようという雰囲気が生まれた、という可能性もあります。

そうではあるんですが、なお私は、おそらく国公立では性教育、妊産期教育をしていないんじゃないか、少なくとも、国公立より私立のほうが性教育、妊産期教育が充実しているんじゃないか、という印象を抱いています。
現実的にいって、ダイヤモンド・オンラインの政府の「女性活躍推進」が「少子化推進」となってしまう理由(下)の、
「女性の妊産期については、議論を呼ぶ問題でもあり、「個人のライフプランに口を出すな」という批判が起きやすい。政策サイドの方では少しずつ、小出しにしているような状況です」
からしても、国公立では、具体的な性教育、妊産期教育をしにくい側面があるように思います。
実際、ときどき、「小学校でこんな性教育をしている。日教組、けしからん!」的な意見を見かけますし。

逆に、私立の、とりわけ宗教系の学校では、宗教的見地、倫理的見地から、堂々と性教育ができるように思うのです。

文部科学省の平成26年度学校基本調査によると、全日制、定時制、通信制を合わせた高校の数は5194。
そのうち、私立は1474校あります。
3割弱です。
上で言及した国際調査の「36歳を境として女性の妊娠力は低下するか?」についての日本のカップルの正解率は3割を切っているそうですから、私立出身のカップルが正解した、と考えたくなる数字です。
そして、ここでは妊産期教育の話だけになってしまいましたが、他の(いわゆる勉強に直結しないような)テーマについても同様に、私立にかよっている子は教わっているか、自主的に(雑誌などで)勉強しているか、ではないか、という仮説をもっています。
私自身、なんというか、生きるうえで大切なこと、自分のバックボーンとなりうることは学校で教わったような気がしています。
そんなこんなで、教育内容という点でも「私立、いいじゃん」と思っているのです。

以上、とくに2つめの点は、「私のときはこうでした、だから私はこう思います」的な根拠薄弱な話ではありますが、あえてそれを書くことにしたのは、ハフィントン・ポストの妊娠しやすいのは何歳まで? 文科省が高校生向け副教材にあるように、文部科学省が高校生向け副教材「健康な生活を送るために」を作成し、全国の高校1年生に配布する、と知ったからです。
同エントリによると、「新たに追加された内容では、女性の妊娠のしやすさが年齢によって変化することをグラフを使って説明」しているそうです。
つまり、これまでの副教材にはそうしたグラフが載っていなかったわけです。
上で書いた、「国公立では性教育、妊産期教育をしていないんじゃないか」が、単なる私の妄想ではない可能性が高まったのです。

さらに、そのグラフが間違っているかもしれない、という話まで出ているんですが、remcatさんの「研究資料集」「妊娠のしやすさ」をめぐるデータ・ロンダリングの過程によると、妊産期問題が明らかになったのは、比較的最近のようです。
私が高校生だった1985年4月~88年3月にそれを教える授業って、実は高校の保健の授業としては最先端の授業だったのかもしれないと思いました。
上述のように、先生は東大の院生ですから、ありえない話じゃないですし。
私の記憶違いもあるかもしれないけれど、一事例としてネットに公開する価値があると考えた次第です。

なお、アピタルの「男女で知って欲しい「妊活」」《35》 妊娠・出産・子育ての適齢期に関する教育によると、女性だけではなく、男性の妊娠・出産適齢期も20代だそうですよ。

プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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