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これからの世界では、余暇を上手に楽しめる人が勝ち組

これまで、当サイト右側に表示される「私のオススメ」の1番を、『声に出して読みたい日本語』で有名な齋藤孝さんの著書『子どもの集中力を育てる』(文藝春秋)にしていました。
この本をオススメの中でも最も目立つところにもってきたのは、もちろん、古巣から刊行された本だからではありません。
広い意味での身体表現(演劇、舞踊、歌唱、演奏)を学ばせる意味で書いたように、私は、集中力が大事だと思っていて、そして、集中力を鍛えるためには、呼吸や姿勢が大切だからです。

その思いは多くのママ、パパに通じたようで、当サイト経由でこの本を多数買っていただきました。
賛同してもらえたような気がして、とても嬉しかったです。
(アマゾンだと、当サイト経由でどんな物が買われたかがわかるのです。もちろん、どなたが買ったかはわかりません。)

さて、集中力、そして呼吸や姿勢が重要であるという思いは、今でも変わりません。
変わりませんが、もっと読んでいただきたいと感じる本が出てきてしまいました。
その本は、メディアアーティスト、筑波大学助教・落合陽一さんの著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)。
そこで、差し替えを決断しました!

この本をオススメする理由は、なんと言っても、タイトルにもある「これからの世界」が、クリア過ぎるほどクリアに示されていることです。
それは、「ホワイトカラーが絶滅する世界」(213ページ)であり、「モチベーションを持ってコンピュータをツールとして使う『魔法をかける人』」(40ページ)と「魔法をかけられる人」(同)に二分された世界です。
10年後はわかりませんが、20年後、30年後はこんな感じになっているんでしょうね。

(あ、もし、このいきなりの展開に面食らっている方がいたら、当サイトの

子どもの将来
これからは「高度な事務処理能力」が必要
地元の公立小中で大丈夫
近代の終わり――人間の理性が統計的事実によってその確からしさを検証される時代が来た
ゴリラは人間のライバルになりうるか――国立大学人文社会系の問題について
中学受験は親の受験です

辺りを読んで、キャッチアップしてくださいませ。)

「魔法をかけられる人」は、たとえば工事現場で働きます。
「工事現場の仕事は、少なくとも人間より正確に動くロボットが開発され、ローコストで実用化されるようになるまではなくならないでしょう。しかも……賃金はむしろ上がると思います」(54ページ)。
「現場の人たちはみんなヘッドマウントディスプレイのようなものを装着して、そこに表示されるコンピュータが最適化した工程通りに工事を進めれば、きわめて効率よく正確な作業が可能になるでしょう」(同)
彼らは「コンピュータの下請け」(55ページ)であり、「高度なロボット」(64ページ)なのです。

そうした、人間にコンピュータの代わりをさせようとする分野は「ヒューマン・コンピュテーション」と呼ばれ、今さかんに研究されています。
落合さんは、米国のアマゾンが行っている「メカニカル・ターク(機械仕掛けのトルコ人)」というサービスにも言及しています(同)。
これは、「コンピュータだけでは不可能な仕事を人間に処理させるクラウドソーシングサービス」(56ページ)です。
「たとえば膨大な画像の中から公開できないレベルの猥褻なものを識別して削除するといった作業」(同)を、人間が安い賃金でするわけです。
「この類の仕事をどうエンターテインメントにしていくかが今後の課題となってい」く(57ページ)というくだりは、メディアアーティストである落合さんだから言える説得力を感じました。

本書では、それ以外にも、人間が「人工知能のインターフェイス」(58ページ)として働く場面がいろいろ紹介されています。

そのような「魔法をかけられる人」たちについて、落合さんは、ダンボール製のヘッドマウントディスプレイを頭につけて「コンピュータの作るバーチャルな代替物で人々が幸福感を得て満足するような面は多少なりとも出てくるでしょう」(133ページ)と言います。
そうした「誰かが作った「魔法」の世界を見て」(39ページ)過ごす生き方について、「魔法をかける人」たちの先頭を走っている落合さん――IPA(独立行政法人情報処理推進機構)認定スーパークリエータ(2009年度上期)であり、2015年には、米the WTNが世界最先端の研究者を選ぶ「ワールド・テクノロジー・アワード」(ITハードウェア部門)において、日本からただひとり、最も優秀な研究者として選ばれています――が「悪いとは思いません」(132ページ)と断言し、「コンピュータに「使われることによる幸せ」という概念も存在しうる」(同)と指摘する辺りは、本書の主眼ではないけれども、凄味を感じました。

そうなんです、もちろん本書は「モチベーションを持ってコンピュータをツールとして使う『魔法をかける人』」に語りかける本でして、その内容は当サイトを何倍にもパワーアップしたような内容なので、ぜひご自分で確認していただきたいのですが、私が衝撃を受けたのは、実は「魔法をかけられる」側の描写でした。
たしかに、「魔法をかけられる」人生も、「悪くない」と思います。
だって、楽しくお仕事できるように、そして、お金をかけずに余暇を楽しく過ごせるように、落合さんのような少数精鋭の「魔法使い」たちが知恵を絞ってくれるのです。
悪いわけがありません……というより、かなりいいと思いませんか?

そんなバラ色の未来が待っているのに、なぜ、間違った方向の努力(何がどうしてこれにあたるかについても、本書はくわしく述べています)を強いて、子どもたちを疲れさせる必要があるのでしょうか。
それより、余暇を上手に楽しめる人になっておいたほうがいいと思いませんか、と私は問いかけたいのです。

最後に、落合陽一さんに関するご参考ページを紹介しておきます。
Newspicks 【落合陽一】なぜ、僕は21世紀を「魔法の世紀」と呼ぶのか
ギズモード・ジャパン 潜入、筑波大学デジタルネイチャー研究室! 現代の魔法使い落合陽一さんの授業ってどんなもの?
COZRE(コズレ) 「いま子どもたちに本当に必要な教育」とは

新しい「私のオススメ・その1」を、どうぞよろしくお願いいたします!

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Comment

  1. はぴ says:

    こんにちは~!
    寒くなりました。み~ちゃんは風邪ひかれてないですか?ひさしぶりに拝見したところ、素晴らしい本のご紹介ありがとうございました。さっそく買いました。いつも子供の将来について考えるヒントいっぱいのブログ。ありがとうございます。うちのあーちゃんも来春から1年生。これからも参考にさせて頂きます!

  2. 渡辺リエラ says:

    はぴさん

    遅くなってすみません。
    コメントありがとうございます。

    そうですね、風邪ひきさんが増える季節ですね。はぴ家のあーちゃんはお変わりないですか?

    ご紹介した落合さんの本をさっそく購入されたということで、私も嬉しいです。
    これからも、いい本を探してオススメしていきますね!

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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