プレママ日記

破水した(39週3日)

 この日の夜、妙な気配で目が覚めました。
 お漏らししているような気がするのです
 でも、尿の臭いはしません。
 鼻の利くとうさま(鼻の目覚め(5週5日)を見てください)を起こして臭いをかいでもらいましたが、同じ意見。
 痛みはまったくありません。

 時計を見ると、日付は替わり、39週4日の午前1時。
 助産院に電話します。
 すぐ来るように言われました。
 荷物をまとめて、タクシーを呼びます(36週くらいに4社の電話番号を調べておきました。一番タクシー需要が高まる時間帯だからでしょう、3社ダメで、4社目でやっとつかまりました。調べておいてよかったです)。

 とうさまと一緒に乗り込みます。
 近いので、すぐ到着。
 午前2時30分、入院です。
 まず、破水であることを確認し、足浴。
 とうさまは帰宅。
 このとき、1枚の紙(陣痛がはじまったら食べる物リスト、次回詳述)を手渡します。

 お、陣痛が来ました。
 生理痛の重いの、という感じで、痛みとしては強くありません。
 でも、なぜか、陣痛がはじまると金縛りにあったようで、まったく動けません。
 四つんばいがラクです。
 なんででしょうねえ~。
 ただ、日の出とともに陣痛はなくなりました。
 不思議ですねえ。
 神秘的ですねえ。
 さよなら、さよなら、さよなら(マルC淀川長治)。

おばあちゃんの知恵(39週1日)

 この日は助産院で妊婦健診
 胎児の位置が高いみたいです。
「ねえ、セックスしてくれないかなあ」
 へ?
 院長先生、今なんておっしゃいました?
 なんて言いたいのをこらえて、言葉を探す。

 だって37歳ですもの。
 世間様から見たら、もう立派なオトナですもの。
 動揺を抑え、出てきた言葉が、
「コンドームはするんですか?」

「付けたら、する意味がなくなるじゃないの。馬っ鹿じゃない」
 たしかにそうだ。
 なんと的を射た指摘だろうか(ひどい言い方、と感じるプレママさんもいるかもしれませんが、このくらいでかあさまは傷つきませんし、このくらい言い合える信頼関係があったのです)。

 そう、お産を早める方法としては、階段の上り下り散歩スクワットが有名ですが、それでもダメなときは、ナニをいたしましょう。
 これは、昔から言われていることです。
 “おばあちゃんの知恵”みたいなものですね。

 一応、科学的な説明をすると、精液にはプロスタグランディンという物質が多く含まれていて、これには子宮を収縮させる働きがあります。
 プロスタグランディンは現に陣痛促進剤として使われているくらいで、したがいまして、性行為でお産を早めるというのは至極合理的な発想なわけです。

 でも、病院ではまず、
「セックスして」
とは言われませんよね~
 さすが、助産院。
 薬を使わず、自然の営みを利用するんですね。

 で、実践したかどうか。
 気になりますよね?
 その日、帰宅して、とうさまに、院長先生から言われたことを伝えたところ、
「心の準備が……」
「準備して、するようなことでもないでしょ」
「いや、だって、働き蜂みたいじゃないか」
「別に行為の後、あなたを食べやしない」
「いやあ、食べるようなもんだ」
 というやりとりの末、週末に決行することになりましたが、決行予定日に破水、入院(詳細は後日)。
 残念ながら“おばあちゃんの知恵”の効果のほどを確かめることはできませんでした。

プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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