プレママ日記

最後の病院健診(36週0日)

 この日は病院での妊婦健診でした。
 順調に行けば、最後の病院での健診になるはず。
 この日ついに10か月に入りましたから。

 まず、超音波検査です。
 いただいた写真は、前回(みーちゃんたーちゃん、宇宙人から人間へ(29週0日)を見てください)同様、顔のアップでした。
 前回同様、人間の顔でした。

 だが、しかし。
 前回は赤ちゃんの顔っぽかったんです。
 心なしか、笑っているような……。

 それが今回は、古代ギリシャの老哲学者風
 ジジくさいんです、なんとなく。
 または、イースター島のモアイ像
 自分のお腹の中で岩がゴロゴロしているようで、なんとなく落ち着かない気分になりました。

 
 超音波検査の後、診察です。
 この日は女性ドクターでした。
 この方に診察をしてもらうのは初めてです。
 大きい病院だと、診察するドクターが変わるのはよくあることなんでしょうかね?
 まあ、かあさまは助産院で産むつもりだし、万一助産院で産めなくて病院に運ばれたとき、どのドクターが勤務中かはわからないし、そもそも意識がモーローとした状態で運ばれたら、ドクターが誰かなんて考える余裕はないです。
 だから、事前にいろいろなドクターに診てもらっておくのはいいことだと思うんですけど。

 さて、このドクター、ドライというか、冷静というか、面白いというか。
 だって、かあさまが、
「足のむくみがひどいんですけど、どうしたらいいんでしょう?」
と尋ねたら、
「寝るとき、足を高くして寝ること。あとは産んじゃうことね」
ですって。

 あ、まあ、そうですよね。
 たしかに、産めばすべて解決します。
 ただ、かあさまとしては、産む前に足のむくみをナントカしたいんですけど……まあ、いいか。

 驚いたのは、診察が終わったとき。
「お互い、このまま会わずに済むといいわね」
 しぇー!!
 たしかに、そうです。
 その通りです。

 かあさまは助産院で産みたい。
 この日は最後の病院での健診。
 次、ここ(病院)に来るとしたら、陣痛が来て助産院に行ったけど問題があって病院で産むことになったときか、予定日を大幅に過ぎて助産院では産めなくなったときか。
 ということは、かあさまとしては、ここにはもう来たくないわけです。

 ドクターとしても、患者が多くて忙しそう。
 診察を待つ時間の長さからしても、そう感じます。
 大きな病院だから、難しいお産も多いでしょうし。
 きっと、1件でもお産が少ないほうが助かるはず。
 だから、
「お互い、このまま会わずに済むといいわね」
となったのでしょう。
 でも、これって、映画やマンガで、宿敵となった親友同士が別れ際に交わすセリフではないの?
 先生、キメ過ぎですよ!

退院したい(35週2日)

 イレギュラーなお産のため、睡眠不足のかあさま。
 初日から早寝早起きに失敗し、がっかりです。

 助産師さんが、
「せっかく入院したのに、眠れなかったでしょう」
とか、
「いきなり、リアルなお産の一部始終を聞かされてもねぇ……。予行演習になればいいんだけど……」
などと、気の毒がってくれました。
 そのくらい、珍しい出来事だったのでしょう。

 そうです。
 臨月に入ってから、他人のお産の様子をリアルに見聞きする(正確には聞くだけでしたが)ことができる人は、めったにいないはず。
 あとから考えれば、かあさまはものすごく貴重な体験をしたわけです。
 かあさま自身のお産が経産婦並みの安産だったのも、もしかしたら、この“お手本”があったからかもしれません。
 でも、そのときは、正直に言って、
〈冗談じゃない!〉
という気分でした。
 いくら素晴らしいお手本を見せてもらっても、かあさまは、そもそも助産院でお産ができるかどうかも危ぶまれる状況にあるのです。
 だから、むくみを解消して、自分の身体を助産院でお産ができる状態に持っていくのに、必死なんです。
 お産がはじまってからのことなんて、とても考える余裕はないんです(そんなだったから、いざお産がはじまったら困っちゃったんですけどね)。

 家に帰ろう。
 そう思いました。
 別に、思い通りに事が運ばなかったから、すねているわけじゃないんですよ。
〈環境を変えれば、自分を変えられる〉
という考え方が安易だったな、と思ったわけです。
 もちろん、環境を変えて成功する場合もあるんですけど、かあさまの場合、自分の気持ちとか状態のほうを変えなければならないんじゃないか、と気付いたのです。
 他力本願がいけなかった、と言うこともできるかもしれません。

 ところが、
「退院したいんですけど」
 院長先生に言いましたが、そう簡単に認めてくれません。
 当然ですよね。

 部屋に1人でいても、グルグル考え事をしてしまって、精神衛生上悪いです。
 身体を動かせば気分も晴れるのでしょうが、むくみのひどいかあさまは、院長先生から、無理に身体を動かさないほうがよい、と言われていましたし、自分でも、あまり動きたくありませんでした。

 で、念のため持って来たノートにあれこれ書き綴っていたら、運悪く院長先生に見つかり、ノートを取り上げられてしまいました。
 院長先生は、
「字を読まない。何も考えちゃだめよ~。野生に戻るのよ~」
と言います。
 でも、字を読まないこと、書かないこと、何も考えないことは不可能です。
 少なくとも、かあさまにはとても難しいことなのだと、このときよくわかりました。

 何もせず、悶々としているうちに湧き上がってきた言葉は、
「ちゃんと産んでやる~」
でした。

プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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