助産院に産前入院したかあさま。
部屋は出産後、入院するのと同じ部屋。
家具は、ベッドと1人用のソファ、ちゃぶ台みたいな小さなテーブルしかありません。
もちろん、テレビもパソコンも本もなし。
何もない部屋での生活がはじまりました。
6時に夕食が運ばれてきて、1人で食べます。
おいしい。
身体にもよい。
それに、らくちんです。
壁を見ながら食事をするのはちょっと味気ないが、まあ、いいか。
お風呂に入って、9時くらいに寝る態勢に入ります。
なんと、規則正しい生活!
我ながら、うっとりします。
ところが、です。
部屋の外が騒がしくて、目が覚めました。
なんと、お産がはじまってしまったのです。
かあさまが寝ていた部屋は2階にあります。
お産は通常、1階にある分娩室(広~い和室)で行われます。
産後落ち着いてから、2階の入院室(6畳くらいの和室・洋室)に移動するのです。
ところが、痛みがあったか何かで早めに入院して、2階の一室で寝ていた妊婦さんの陣痛が、突然はじまってしまいました。
その日は、お産があったばかり。
分娩室では、大仕事を終えたばかりのママとベビーが眠っています。
2階の入院室で、そのままお産をすることになりました。
彼女の部屋はかあさまの部屋の斜め前でした。
最初は、遠くで助産師さんがしゃべっているな、という程度。
かあさまは、
〈はじまったんだ~〉
と考えながら、うとうとしていました。
しかし、やがて彼女はトイレに移動しました。
トイレに行きたかったのか、狭い空間に閉じこもりたかったのか。
陣痛の間、トイレにこもる人は多いらしいですが、彼女もそのタイプだったわけです。
ただ、付き添っていたダンナさまは、心配でしょうがない。
コンコン。
トイレのドアを叩いては、
「○○、大丈夫?」
トイレの中の人は、無言だったり、うめき声を上げたり。
運の悪いことに、トイレはかあさまの部屋の隣り。
やりとりは丸聞こえ、というより、まるで同じ部屋にいるかのような臨場感。
これじゃあ、寝られません。
お産は数時間で、無事終了しました。
超安産です。
〈よかった~〉
と思いながら、かあさまは眠りにつきましたが、もう、明け方に近い時間になっていました。