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座・高円寺の『ピノッキオ』を観てきました

ご招待をいただき、座・高円寺の『ピノッキオ』を観てきました。
広告ではありませんが、自腹を切っていないので、無意識のうちに評価が甘くなっている可能性があります(人間ですから…)。
その点、ご理解いただいたうえで、以下、お読みください。
なお、正確を期すと、ご招待をいただいたのは私の分だけで、みーちゃんの分はもともとご招待、というか無料です。
「劇場へいこう!」という子ども向けシリーズの公演であるため、中学生以下は全員ご招待、なのです。
ありがたいですね~

さて、『ピノッキオ』は、ディズニー映画にもなった、あの有名な木の人形のお話が原作。
脚本・演出は、イタリアの演出家、テレーサ・ルドヴィコという人です。
昨年までは、この時期、同じ演出家による『旅とあいつとお姫さま』が、毎年上演されていました。
『旅とあいつとお姫さま』については、『旅とあいつとお姫さま』と「エマオ」と「いじめ対策」で触れましたが、「かぐや姫」と、「トゥーランドット」と、ヨハネの首を抱くサロメと、カラヴァッジョやレンブラントの「エマオの晩餐」で有名な、エマオへ向かう弟子たちとともに旅をしたイエスの話、などを思い出すようなお芝居です。
魔界や死者の世界といった、目に見えない、ちょっとダークな世界が、当たり前のことのように出てきます。
だから、子ども向けの枠ではあるけれど、どちらかと言うと、大人が楽しめる作品だと感じました。
あるいは、大人になりかけている子どもたち、学年で言えば、中学生や小学高学年くらい。

それに対して、今回の『ピノッキオ』は、子ども向けの枠にぴったりのお芝居でした。
みーちゃんも、大いに楽しんでいました。
小学低学年の子も楽しめると思います。

だからと言って、大人が我慢して観るタイプのお芝居だ、ということはありません。
大人にも十分、楽しめる作品です。
とにかく、センスがいいんですよ。
洗練されている、というか、かっこいい、というか。

わかりやすいのは衣裳でしょうか。
基本的に、ちょっと昔のヨーロッパの服装なんですが、どこか無国籍な、無機質なところがあって、「アジア人がバタ臭い恰好をしている」感がまったくありません。
キッチュな衣裳もありますが、スパイスとして効いていて、かえって全体のセンスの良さが印象付けられます。

美術や音楽も、そう。
チャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」の中のこの曲をこういうふうに使うか、という驚きもありました。
あと、振付とまでは言えない、お芝居の中のちょっとした動きも、とっても素敵でした。

そんな感じでして、ひとことで言うと、大人の寓話、ということになるのかな。

逆に言うと、世俗にどっぷり浸かっている大人には楽しめないかもしれません。
だって、コオロギや動物たちはしゃべるわ、死者も出てきてしゃべるわ、そもそも、あらすじはと言えば、あやつり人形が勝手に動き回り、最後は人間になる、という話ですから。
「ナンセンスだ」「バカバカしい」と感じる大人がいてもおかしくない、と思います。

私が面白いなあと思ったことは2つあります。

まず、私は欧米の話は、ほぼ聖書のリライトや再解釈だと考えているのですが、『ピノッキオ』は、有名な放蕩息子のたとえ話に通じると気付きました。
いわゆるピノキオの話は知っていたつもりでしたが、

ピノッキオが、ジェペットじいさんのことを何度も「お父さん」と呼びかけていること、
ピノッキオは、お父さんが大好きなのに、何度も誘惑に負けてお父さんとの約束を破ってしまう、ダメダメな設定であること、
たまたま数日前に、久しぶりに行った教会で、神父様がお説教の中で放蕩息子の話をしたこと、

などから、はじめて気が付いたのです。
そうやってピノッキオと放蕩息子を重ねると、ピノッキオは、(父である神さまを裏切ってばかりいる)私たち人間なわけですね!

もう1点はそこからつながるのですが、ラストでピノッキオ(=私たち人間)が、現代の服装で、人間になって踊る場面において、ロボットが進化し、自動化が進む今だからこそ、の人間の肉体の価値、人間の命の価値を、痛切に感じました。
辻田暁さんの踊り、素晴らしかったです。

「面白そうだなあ~」と思ってくださった方がいたら、今年はもう少しで千秋楽ですが、来年以降も再演してくれると思うので、ぜひ観に行ってください!

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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