舌癒着症の手術を受けて

「普通の子に比べれば小さいし、手のかかる子だけれど、よく笑う、元気な娘です」
これは、手術の後、私がママ友に送ったメールの一部です。
手術を受けたからと言って、体重がすぐにググっと増えるわけではありません(みーちゃんの場合、手術の第一の目的は、体重を増やすことでした)。
でも、呼吸面、哺乳面含めて、すぐにさまざまな効果が現れたので(生後105日 舌癒着症の手術を受けるを見てください)、気持ちがとてもラクになりました。

正直言って、手術を受けるまでは、
「子育てって、こんなにツライものなの?」
と、暗闇を1人歩いているような気分でしたが、術後は希望の光が差し込んできたようで、気分がすっかり明るくなりました。

ただ、だからこそ、感じてしまうのは、
「もっと早く舌癒着症の手術を受けていれば……」
という後悔。
「いろいろ調べることを仕事にしていながら、どうして舌癒着症に気付かなかったのだろう、もっと早く舌癒着症のことを知っていれば……」
という悔しさ。

私が当初の方針を変えて、生後105日までのママ日記は、メルマガにするのではなく公開しよう、と考えたのは、この時の後悔、悔しさのためです。
舌癒着症の手術を、
「いいよ、いいよ~みんな、受けましょう~」
とお勧めするためではありません。
診察や手術を受けるかどうかは、人それぞれだと思います。
実際、診察を受け、舌癒着症であると診断されたけれども、子どもに手術を受けさせない人にも出会いました。

私の願いは、そういう“病気のようなもの”があるらしいということを、多くの人に知ってもらいたい、というものです。
それさえ知っていれば、何かで、
「あれ?」
と思った時に(例えば、私を例に挙げれば、「深呼吸が下手だな、なんでだろう」と思った時(生後92日 私からみーちゃんに舌癒着症が遺伝したんだを見てください)など)、調べることができますよね。

私は職業柄、検索によって、半ば隠れているような情報でも探し当てることができます。
でも、それは一番最初に入れるキーワードを知っているから、できること。
(出てきたページを読んで、どんどんキーワードを変え、深掘りしていくわけですね。)
どうも舌癒着症という病気もどきがあるらしい、という入り口を知らないと、いくら自信があっても、検索のしようがないのです

では、私に舌癒着症を知るチャンスがまったくなかったかというと、おそらく1回だけあったのです。
産まれてすぐ、助産院の院長先生が、みーちゃんを舐めるように執念深く観察して、一言、
「色黒の赤ちゃんなのね」
と言いました。
今思えば、あれは舌癒着症を疑っていたのです。
ひょっとしたら、確信を持っておられたのかもしれない。
でも、先生は舌癒着症のことはおっしゃいませんでした。

だったら、私から、
「何か気になることがありますか?」
と聞けばよかったのです。
そうしたら、退院後すぐ舌癒着症の手術をして、みーちゃんの体重は順調に増え、何の悩みもなく育児を楽しんでいたかもしれません。

でも、その時の私は、お産で気力も体力も使い果たしていました。
「お願いだから、しばらく休ませてくれ、休憩したら次の問題に取り組むから、ちょっとだけ待って」
という心境でした。
実は、先生の「色黒の赤ちゃん」という言葉を聞いて、
「みーちゃんは、腎臓が悪いのかな」
と思いました。
それは、自分が腎盂炎を患ったりして、腎臓が、他の臓器に比べると弱い、という実感を持っていたからです。
「ひょっとしたら、赤ちゃんのみーちゃんを抱えて病院通いをすることになるかもしれない、大変だぞ」
と思いました。
だからこそ、「ちょっと休ませて」と考えたわけですが……痛恨の勘違いでした

また、そもそも産む態勢が整っておらず、産むのに精一杯だったから、「ちょっと休ませて」になった、という側面もありました。
自分の身体が冷えていたり、足がむくんだり……。
ただ、冷えやむくみは、今考えれば、自分が舌癒着症だったから、なのかもしれません。
巡り巡って……なのですね。

これは仮定の話ですが、産まれてすぐ、院長先生が舌癒着症について教えてくださったとしても、私は絶対に納得しなかったと思います。
「そんな病気、聞いたことないし、調べたら、オフィシャルに認められた病気じゃないですね。
そんな“病気”で手術なんて、ありえない!」

と言ったと思います。

私の舌癒着症の手術 経過報告で書いたように、私自身、筋を切った形跡があったわけですが、それがわかったのは、私が納得して、手術を受けたからなわけで……。
(赤ちゃんの時に筋を切っているのに、大人になって「重症」と診断されるって、いったいどういうことなのでしょうね。
超重症だったのでしょうか?
切っていなかったら、いったい、どうなっていたのでしょうか???)

私が納得するには、
「みーちゃんの体重が増えない……」
と悩む、3か月という時間が必要でした。
その私の理屈っぽさを理解していたからこそ、院長先生は、産まれた時に舌癒着症のことをおっしゃらなかったのだと思います。
哀しいな、この性格。
申し訳ないな、みーちゃんに。

冒頭で、手術を受けて「気分が明るくなった」と書きましたが、同時に、私は「闇」を抱え込みました。
この先、たぶん死ぬまでずっと、
「3か月以上も苦しい呼吸をさせてしまった」
という申し訳なさを抱きながら、みーちゃんを育てていかなくてはならないのです。
それとも、中身は違えども、そういう申し訳なさを感じながらするのが、子育てというものなのでしょうか……。

ちょっと大げさだと感じた方もいらっしゃるかもしれませんね。
私たちの母子手帳の「発育の目安グラフ(女の子)」の「乳児身体発育曲線」「幼児身体発育曲線」をアップしました。

hatsuiku

誕生時3350gと太めだった体重が、不自然なくらいにほとんど増えない様子がご覧いただけると思います。
体重が94%の子どもの“帯”に戻るのは生後7か月のことでした。

ただ、それで終わりではありませんでした。
当初順調に思えた身長が伸びなくなります。
体重と入れ替わりに、生後7か月くらいから94%の“帯”の下限を這うようになりました。
12か月(1歳)から伸びが良くなりますが、それより前、10か月の健診で、
「低身長」
「1歳2か月くらいでチェックを」
と書かれ、とてもショックでした。
3歳になってからは、平均くらいを維持していますので、手術するまでの105日の影響が、約4か月間の低身長として、遅れて現れたように思えてなりません。

また、はいはいは、このグラフにもあるように、生後8か月くらいでするのが普通だと思うのですが、みーちゃんは1歳間近まで、はいはいをしませんでした。
ただ、ニコニコしながら座っているだけ。
そんな我が子を見ながら、日々、胸が引き裂かれるような思いがしました。
みーちゃんは8か月から保育園に行っていましたから、保育士の先生が、座っているみーちゃんのお尻を軽く押したり、愛情をこめて熱心に働きかけてくださったおかげで、はいはいするようになりました。
(さすが、プロ!)
初めてはいはいした日、先生が、
「それはそれは、美しいはいはいでした!」
とおっしゃってくださり、不覚にも涙が出ました。
この約4か月の遅れも、手術するまでの105日と対応しているように思えてならないのです。

今、みーちゃんは5歳。
順調に育っているように思えますが、この先もまた、
「105日の影響か……」
と思う出来事が起こるかもしれません。
それが子育てというものなのでしょうか。

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プロフィール

渡辺リエラ
1969年東京生まれ。1988年東京大学文科1類入学。1992年東京大学法学部卒業。出版社勤務、専業主婦を経て、現在、別名義にて大学講師などとして活動中。2007年7月第1子「みーちゃん」誕生。
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生後106日以降のママ日記は有料とさせていただいております。有料とする理由含め詳細は「当サイトについて」をご覧ください。
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